カロリメーターマスターへの道 Vol.1つづきマイクロカロリメーターって何?

仲村:「セミナーの資料ではITCとDSC、それぞれの概要と測定例が簡単にまとめられていて、どのようなデータが得られて、そこからどのような情報が得られるのか、ということはなんとなくわかったわ。でも、実際にどのように測定するのか、という情報までは説明されていないみたい・・・まずはITCから調べてみよう。iTC200っと・・・

マルバーンのMicroCal iTC200・・・・これか・・・

MicroCal iTC200 ウェブサイト

※iTC200は2017年3月31日をもって販売を終了しております。
現在販売中のPEAQ-ITCをご参照ください。

あ、ムービーもあるぞ。サンプルセル内でサンプル同士が反応して熱が生じると、リファレンスセルとの間に温度差が生じるから、その差をなくすようにコントロールしている・・・ってことね。発熱するときはシグナルが下に出るのは、サンプルセルの温度を下げるため、だからなのか。なあるほどね。でも、これってすごい外気の影響受けそう。空調とか大丈夫なのかな?

原理の説明もあるみたい

論文でよく見るデータだ。でも、なんでこのデータから解離定数とかが求まるんだろう?
KDは接線で求めてるってこと?

ΔH、エンタルピーは縦軸の変化量ってことだよね。ん?縦軸の単位が変わっている。滴定サンプル1molあたりの熱量変化になってる。

技術ページにもう少し詳しく書いてあるかな?
見てみよう

等温滴定型カロリメトリー技術ページ

「最終的に各ピークが積分され、リガンド対タンパク質のモル比に対してプロットされます。その結果、得られる等温滴定曲線は、親和性(KD)が得られる結合モデルでフィッティングされます。」ってあるから、接線から解離定数をもとめているんじゃなくて、理論式でフィッティングをかけているんだ。

「等温滴定曲線の中点にあるモル比により、結合比が求められます。」ってあるけど、これ、セル側のサンプルに結合サイトが何箇所かってことだよね?なんで中点にあるモル比で結合比が求められるんだろう?

エンタルピー変化は縦軸の変化だったけど、ここでは「Biding mechanism」ってなってる。なんでエンタルピーがメカニズムなんだ?それにエントロピーが出てきていない!

うーむ、わからない・・・

でもサンプル準備がラベル化とか固定化をしなくて済むから楽みたいだなぁ。「リガンドがタンパク質に結合すると、数百万分の1℃の変化が起こり」ってあるけど、そんな小さい温度変化を検出する装置なんだ。まぁ、結合して体温が変わるほどの変化が体内で起こっちゃ困るもんね。

どんな分野でITCが役に立ってるんだろう・・・?

「ITCは創薬および薬剤開発で、以下のような目的で広く使われています。」か・・・

「結合親和性の定量化」つまりELISAとかRI、SPRとかで求めるパラメータだよね。固定化とかラベル化ないし、洗浄することもないから、より自然な状態の反応が得られるのがメリット、ってとこかな?

「候補薬の選定と最適化」結合の強さでスクリーニングするってことかな?

「サーモダイナミクスと活性濃度の測定」熱力学パラメータは構造解析時の有用な情報って言うけど、この活性濃度の測定ってなんだろう。インターフェックスの資料に書いてあった「タンパク質の品質管理」のことかな?

「作用機序の特性評価」 なんか、よくわからないなぁ。結合のメカニズムってことかな?

「低分子創薬における対象結合ターゲットの確認」スクリーニングか。でも、スループットあんまり高くなさそう・・・

「結合の特異性と結合比の把握」非特異との識別ってどうするんだろう?

「hit to leadにおけるIC50およびEC50のバリデーション」これはスクリーニング後の最適化のことを言っているのかな?

「酵素反応速度の測定」 酵素!?そんなの測れるの?

というか、実際どうやって測定するのかはわからないのかな?マニュアルとかダウンロードできないのかなぁ?

とりあえずメーカーに問い合わせしてみよう。」


そんなこんなで、仲村さん結構マイクロキャルにはまってしまったようです。

とりあえず自力でがんばってみているようですが、 やはりウェブサイトやマニュアルの情報では解決できないことが次々に出てきてしまっています。

これからほぼ毎月にわたり、仲村さんがカロリメーターをマスターするまでのお話をご紹介していきます。

カロリメトリー初中級者の方が、読んで役に立つようなQ&Aやトラブルシューティングも交えてご案内する予定です。

ご期待ください!!

関連技術資料も公開しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。

フォームに必要事項をご入力いただきますと、以下の資料一式ダウンロードしていただけます。

ITCアプリケーションノート

  • MicroCal ITCのアッセイ開発からリード分子最適化のアプリケーションによる創薬への役割

DSCアプリケーションノート

  • DSCを用いたバイオ医薬品開発工場のための抗体Fab領域の安定性の調査
  • 効率的なバイオ医薬品プロセスを迅速かつ効率てきに開発するツールとしての示差走査型カロリメトリー
  • 示差走査型カロリメトリーを用いたタンパク質バイオ医薬品の液体製造開発の促進
  • DSCを用いたバイオ医薬品のプレフォーミュレーションと安定性に関する研究

深田はるみ(ふかだ はるみ)先生のご紹介
大阪府立大学客員研究員
【ご略歴】
1974年大阪府立大学農学部農芸化学科卒業
1979年大阪府立大学大学院農学研究科単位取得退学
同年大阪府立大学農学部助手
1997年大阪府立大学農学部助教授
2008年大阪府立大学大学院生命環境科学研究科准教授
2015年退職


ブログ後記深田先生は、生化学系のカロリメトリーがまだそれほど日本に広まっていないころより、当時大阪府立大学農学部助手でいらした高橋克忠先生の下でカロリメーターのシステムを作るところから携わっていらっしゃいました。初期のころは、デュワー瓶型カロリメーターやフロー型カロリメーターを使用し、一度に数十mg以上のタンパク質を消費しながら測定していたそうです。また、日本で初めてカロリメーターでタンパク質を生化学的立場から測定したのも、先生の研究室が初めてだったそうです。世界最初に開発されたPrivalovの蛋白質溶液用DSCを始め、DSCやITCの古い機種のほとんどを使用してきた熱測定屋さんのお一人です。なお、高橋先生は還暦を過ぎられた現在でも、関西学研都市でJST委託業務の一部として微生物が発生する熱をそのまま測定する研究を続けられ、新しい「生物活性測定装置」も開発しておられます。

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