カロリメーターマスターへの道 Vol.7 DSC測定2回目DSC測定のポイントは溶液の充填!(その2)

カロリメーターマスターへの道 Vol.7 DSC測定2回目
DSC測定のポイントは溶液の充填!(その2)

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ここに登場する人物とストーリーはフィクションです。
テクニカルに関する内容に関しましては、大阪府立大学客員研究員 深田先生にご助言をいただいております。

 

ページ下の「ダウンロード」ボタンより、
本文中に登場する、仲村さんがまとめた、「深田先生に確認することメモ (DSC)とその回答」がダウンロードできます。

(その1からの続き)

通常、システムチェックではリスキャンを実施しますが、今回仲村さんは、測定間のサンプル充填を練習するため、4スキャン目に超純水の充填を試みることにしました。なお、ベースラインの安定化には、少なくとも3スキャン以上、実施していただくことをお勧めします。
3スキャン目の温度が下がってきました。30℃くらいになったら圧力キャップを外して、超純水の交換ですね。緩衝液によるコントロール測定後のサンプル測定と想定して、サンプルセルから溶液を取り出し、あらたに超純水を充填してみます。
はい。落ち着いて実施してくださいね。
操作をする前に、超純水をThermoVacで脱気開始。その間にキャップを外し、圧力センサーに圧力プラグをセット。今回はフィリングファンネルを使わず、セルにルアーキャップシリンジのつけたニードルを、セルの底にぶつけないように静かに挿入して超純水を抜き取る。サンプルを連続測定する場合はThermoVacによる洗浄操作がここで加わりますね。だとすると、少し早めにサンプルの脱気をすべきですね。
そうですね。時間配分に注意が必要ですね。
脱気した超純水をサンプルセルに充填完了。Scanが開始される前に作業を終了することができました。ところで先生。サンプルを連続して測るときにもThermoVacでの洗浄は必須ですか?
操作もそれほど難しくないので私は使用していますよ。ただ、流す量はセル容量の10倍程度、洗剤と超純水を流せばよいと思います。もちろん最後に緩衝液でのリンスを、シリンジを使って行うことが重要ですね。
緩衝液による共洗いですね。あ、PreScan Thermostatの15分が終了して、Final Equilibrationに入りました。モニターを見るとDP値が限りなくゼロに近づいていますね。
そうですね。あと数分で測定が開始されますから様子をみてみましょう。
DP値、問題なさそうです。あとは測定結果を待つのみですね。
そうですね。この間に、ご用意いただいた質問についてお答えしますね。
仲村さんは、深田先生に確認したことをエクセルシートにまとめました。

ページ一番下の「ダウンロード」ボタンより、このシートがダウンロードできます。

翌日、ラボに到着すると測定は終了していました。
ベースラインの再現性のよいデータが取得できたみたいですね。
よかったです!ポイントは溶液の充填、ですね。
そうですね。それさえマスターすれば、DSC測定は難しくはありません。あとは、いかにセルをきれいに保つか、が重要です。今後、実際のサンプルを測定すると、タンパク質が変性して凝集を起こすことがあります。そのようなデータが得られた場合、直ちに測定を中止し、サンプルセルを洗浄する必要があります。
凝集したかしていないか、どこで判断することができるのですか?
測定途中でレスポンスが急激に下がる現象が起こります。
これは、タンパク質の凝集反応です。このような現象が起きたら、すぐに測定を止めてください。セル汚れの原因になります。なお、すぐにと言っても高温で圧力キャップを開けるのは危険ですから、30℃くらいまで下がったら直ちに、取扱説明書の「汚れがひどいときの洗浄方法」の指示に従い洗浄を行ってくださいね。
はい、わかりました。では先生、このようなサンプルはDSCで測定は難しいということになるのでしょうか?
条件を変えることで測定が可能になる場合もあります。例えば、 サンプルの濃度を下げるのも1つですね。また、緩衝液の種類、pHや塩濃度を変えたり、scan rateを速くして、高温にさらされる時間を短くして対応する、なども考えられます。
わかりました!ありがとうございます。
こうして仲村さんは、VP-DSCの操作方法を習得できました。次回からは実際のサンプルを測定し、解析方法を学んでいきます。
なお、弊社のホームページで、より強力な洗浄として水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを使用した方法をご案内しております。14% Decon90(または20% Contrad70)で改善されない場合、こちらの方法をお試しください。下記のサイトより技術資料をダウンロードすることが可能です。
(マルバーンWebsite VP-DSC 技術資料ページ)

以下の「ダウンロード」ボタンより、本文中に登場した、「深田先生に確認することメモ (DSC)とその回答」 がダウンロードできます。
(その1でダウンロードできるものと同じです。)

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