アルミナの分散性を左右するゼータ電位~pH依存性と応用~
目次
1, アルミナとは?なぜゼータ電位が重要?
2. アルミナのゼータ電位特性
3. ゼータ電位の応用と制御
4. ゼータ電位測定に使われる代表的な装置
1. アルミナとは?なぜゼータ電位が重要?
アルミナ(酸化アルミニウム、Al₂O₃)とは、非常に硬く、耐熱性・耐薬品性に優れた無機材料であり、さまざまな産業分野で広く利用されています。代表的なものでは、セラミックス材料、研磨剤、触媒担体、化粧品や医薬品などがあります。
これらの用途の多くでは、アルミナが微粒子(サブミクロン〜ナノサイズ)の形で使用されます。
微粒子を液体中に分散させる場合、重要になるのが「分散性」です。分散性が悪いと、粒子同士が凝集して沈殿したり、製品の性能が不安定になったりするため、粒子が均一に安定して分散していることが求められます。
ここで登場するのが「ゼータ電位」という指標です。ゼータ電位とは、粒子表面の電荷と液中のイオンとの相互作用によって生じる電気的な境界(せん断面)における電位差のことを指します。この値が大きい(正または負)ほど、粒子同士が反発し合い、凝集しにくくなる=分散性が高いとされます。
たとえば、アルミナ粒子が水中で正のゼータ電位を持っていれば、同じ正電荷を持つ粒子同士は反発し合い、安定した分散状態を保ちやすくなります。逆に、ゼータ電位がゼロに近づくと、粒子間の反発力が弱まり、凝集が起こりやすくなります。
このように、ゼータ電位はアルミナの分散性を左右する重要な物理化学的パラメータであり、材料開発や製品設計において欠かせない指標となっています。
参考記事:ゼータ電位の基礎と測定

2. アルミナのゼータ電位特性
アルミナ(酸化アルミニウム)のゼータ電位は、pHによって大きく変化します。これは、粒子表面に存在する水酸基(–OH基)が、pHに応じてプロトン(H⁺)を受け取ったり放出したりすることで、表面電荷が変化するためです。
アルミナの等電点(Isoelectric Point)
アルミナの等電点(ゼータ電位が0になるpH)は、一般的にpH 8.5〜9.5の範囲にあります。このpH付近では、粒子表面の正電荷と負電荷が釣り合っており、粒子間の反発力が最も小さくなるため、凝集しやすい状態になります。
表面官能基の役割
アルミナ粒子の表面には、水と反応して形成される水酸基(–OH)が存在します。この官能基は、以下のような反応を通じて表面電荷を変化させます。
- 酸性条件下(低pH):
Al–OH+H+→Al–OH2+Al–OH+H+→Al–OH2+
→ 正電荷を帯びる
- 塩基性条件下(高pH):
Al–OH→Al–O−+H+Al–OH→Al–O−+H+
→ 負電荷を帯びる
pHによって表面官能基の状態が変化し、それがゼータ電位に反映されます。
3. ゼータ電位の応用と制御
ゼータ電位は、単なる理論的な指標ではなく、実際の材料開発や製造プロセスにおいて極めて実用的な役割を果たします。特に微粒子材料では、ゼータ電位の制御が製品の品質や性能に直結します。
分散液の安定化
アルミナを液中に分散させる場合、ゼータ電位が高い(±30 mV以上)状態を保つことで、粒子間の静電反発力が強まり、凝集を防いで安定した分散液を得ることができます。これは、以下のような用途で重要です。
- CMPスラリー(化学機械研磨):半導体製造において、ナノレベルの平坦化を行うために使用
- セラミックインク:インクジェット印刷や3Dプリンティングでの精密な成形
- 触媒スラリー:均一な分散が反応効率に影響
表面改質によるゼータ電位の調整
アルミナ粒子の表面に界面活性剤やポリマーを吸着させることで、ゼータ電位を意図的に変化させることができます。これにより、以下のような制御が可能になります。
- 分散性の向上:疎水性粒子を水中に安定分散させる
- 選択的吸着:特定のイオンや分子を選択的に吸着させるための表面設計
- 粒子間相互作用の制御:凝集・沈降・ゲル化などの挙動を調整
吸着・分離プロセスへの応用
ゼータ電位は、粒子がどのような電荷を持つ物質と相互作用するかを決定づけるため、以下のような分離技術にも応用されます。
- 重金属イオンの除去:負に帯電したアルミナ表面が陽イオンを吸着
- 水処理・排水処理:凝集剤との相互作用を最適化
- バイオ分離:タンパク質やDNAなどの電荷特性を利用した分離
4. ゼータ電位測定に使われる代表的な装置
微粒子材料の分散性や安定性を評価する上で、ゼータ電位の測定は欠かせません。マルバーン・パナリティカルの「ゼータサイザー」シリーズは、世界中の研究機関や企業で広く採用されています。

主な特長
- 高精度な測定
動的光散乱(DLS)による粒子径測定と電気泳動光散乱(ELS)によるゼータ電位測定を組み合わせ、ナノ粒子から高分子まで幅広いサイズ範囲に対応。MADLS®(多角度動的光散乱)により、粒子径分布の分解能が大幅に向上。 - 少量サンプル対応
わずか3 µL以下のサンプルで測定が可能。貴重なサンプルを無駄にせず、迅速な分析が行えます。 - 自動化と操作性
自動滴定装置(MPT-3)と連携することで、pH変化に伴うゼータ電位の変化を自動で測定。直感的なソフトウェアにより、初心者でも扱いやすい設計です。
信頼性の高いデータ解析
測定結果に加えて、測定条件や信頼性指標も表示されるため、再現性やデータの妥当性を確認しやすいのも特長です。
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