電池製造における粉体挙動の理解

※本記事はフリーマンテクノロジー社の資料 AP113を日本のお客様向けに改訂したものです※
 

電池とスラリーと粉体の関係

 
リチウムイオン(Li-ion)電池は、エネルギー密度が高く、自己放電への耐性があり、メモリ効果が極めて小さいことから、消費者家電、電動工具、自動車や航空宇宙産業用途など幅広い用途で充電式電池として利用されています。
図:リチウムイオン電池の製造に伴う一般的な工程段階
工程内のさまざまな段階は、工程開始時に作成するスラリーの品質に大きく依存します。そしてスラリーの特性は、結合剤および溶剤と混合した粉体の特性、およびその混合プロセスにおける挙動に依存します。
最適なプロセス性能を保証し、高品質な最終製品にするには、スラリーの状態で微粉含有率、粘度、および固形分などの重要な基準を満たすことが必要です。特に、固形分の均一性はスラリーからの基材の被覆効率に影響を与えます。そのため、混合および分散の過程で粉体を凝集させないことが重要になります。
 

プロセスに関連する粉体の特性評価

 
粉体の流動特性は、スラリー形成における混合および分散性能を決定付ける要素であり、流動挙動の決定や凝集などのファクターに影響を与える特性と同じです。以下のデータは、パウダーレオメータFT4®を使用して測定した特性が、Li-ion電池製造でのプロセス内の処理とどのように相関するかを示しています。
 
異なる供給業者から調達した3つのLiFePO4バッチを使用して陽極を製造しました。バッチ1では均質なスラリーの生成が認められた一方、バッチ2およびバッチ3は均質性に欠け、システム停止や規格外製品につながる閉塞も発生しました。
この時の材料粉体を分析したものが上図になります。SEは、粒子間の物理的かみ合いおよび摩擦の程度を定量化します。バッチ1のSE値は低いため、粒子をより自由に分散させることが可能であり、結合により凝集物が形成される可能性は低いことが示唆されます。
また、粉体の空気の透過性も確認しました。
 
透過性は、粉体が流入した空気を放出または保持できる性質を表します。
バッチ1について記録された圧力降下の増大は、透過性の低下を示しており、おそらく粉体層がより効率的に充填された結果であると見られます。通常は、充填構造に規則性がある粉体ほどより自由に流動するため、分散もより自由かつ均一に行うことができます。また、付着強度が低い場合も、凝集のリスクは低下します。
これらの結果から、Li-ion電池生産での陽極の製造に使用するための均質なスラリーを作成するには、物理的かみ合いおよび摩擦の程度が低く透過性の低い粉体が有用であることが示唆されます。パウダーレオメータFT4の多変量アプローチでは、これらの特性を正確に定量化できるため、粉体仕様を確実に定義することができます。
 
パウダーレオメーターFT4

おすすめの記事

ご質問、お問い合わせはこちら≫