MicroCal DSCメンテナンスに関するFAQ
*こちらの記事は、2019年12月に公開したものを編集したものになります。
実験装置のメンテナンスは信頼性のあるデータを取得するためにとても重要です。貴重なサンプルを測定する前に、装置が良好な状態であるかを把握しましょう!こちらのブログでは、よくあるお問い合わせTop3と、その原因、及び対処方法についてご案内いたします。
MicroCal DSCシステムに関するよくあるお問い合わせの原因Top3
第1位 サンプルによるセル汚れ
システムが汚れているか否かは、超純水を用いたシステムチェックで確認します。
全機種共通の症状
- 普段のデータと違う
- データの再現性が出ない
【対処方法】
お問い合わせのほとんどが、セルの汚れに起因する不具合です。これらのお問い合わせを受けたとき、我々はまず、システムの問題か、サンプルの問題かを切り分けるため、「システムチェック(水測定)」の実施をお願いし、そのデータを確認します。
【システムチェックのチェックポイント】
- 測定開始時のDP値は、0 mcal/minにより近い方が望ましいが、測定条件によりデータ開始ポイントは変動する。そのため、-1から+1 mcal/minの間にあり、複数回のスキャンで再現性があることを確認する(1測定目のデータは除く)。
- ベースラインがよく一致していること
なお、システムチェックの結果は技術担当者が確認をいたしますが、上記チェックポイントから逸脱する現象が確認されたら、マニュアルにある「汚れがひどいときの洗浄方法」で、セルの洗浄を実施します。洗浄後、再度システムチェックを行い、データが改善されるかを確認します。
「システムチェック」や「汚れのひどいときの洗浄方法」はここからもダウンロードできます。
また、装置を稼働していなくても、定期的にシステムチェックを実施し、装置の状態をモニターすることをお勧めいたします。
第2位 第2位 PCの老朽化と測定時のメモリエラー
物理的に破損、故障しているケースが多いです。
VP-DSC/VP-Capillary DSC
- PCが突然動かなくなった
- 解析ソフトウェアが突然解析できなくなった
PEAQ-DSC/PEAQ-DSC Automated
- 測定中に「out of memory」または「invalid format」のエラーが出た
【対処方法】
VP-DSC/VP-Capillary DSC
これらの装置は製造、販売が終了しており、使われているPCのOSもWindowsXPやWindows7などでWindowsのサポートが終了しています。また、PCそのものの老朽化が懸念されます。
日ごろから、大切なデータを外部媒体へ保存するように心がけてください。また、使用しない場合はPCの電源を落とすようにしてください。
- PCに不具合が見られた場合
→ PC内部にあるメモリボードの抜き差しをして改善することがあります。詳細につきましては、ヘルプデスクにお問い合わせください。メモリボードの抜き差しで改善されない場合は、弊社にて調整されたソフトウェアインストール済みPCの更新 をお勧めします。(Windows10に対応したものを準備しております。)
- 解析ソフトウェアに不具合が見られた場合
→ 不具合のある解析ソフトウェアをアンインストール後、英語版のユーザマニュアルに従い、再インストールをお願いします。アンインストールを行う前に、お手元に解析ソフトウェアのインストーラ(CD)があることをご確認ください。 インストーラは納品時期によって異なりますが、CDに「Analysis Software」の記載があり、シリアル番号の情報がケースに記されています。Originパッケージの中にあるインストーラCDではございませんのでご注意ください。お手元にインストーラがない場合は再発行(有償)が可能です。
引き続き、安定した状態でシステムを稼働させていただくためにも、PCまたはシステムの更新をお勧めしております。装置のサポート終了日は以下の通りです。
VP-DSC/VP-Capillary DSCのサポート終了日
2024年 6月30日
PEAQ-DSC/PEAQ-DSC Automated
PEAQ-DSCはデータのサイズが大きく、1つのファイルで150 MBを超えるとデータの保存ができなくなります。データが大きくなりそうな場合はMeasurement Fileを複数に分けて作成し、測定を行うようにしてください。(連続測定が可能です)また、メモリが足りなくなることもあります。使用しない場合はPCの電源を落とすようにしてください。また、日ごろから、大切なデータを外部媒体へ保存するように心がけてください。
第3位 超純水や洗浄液(14% DECON90)の劣化(容器内での腐敗、沈殿の発生、ホコリ等の混入)
VP-Capillary DSC/PEAQ-DSC Automated
サポート担当者からの訪問作業報告によると、訪問時にボトルやリザーバーを確認すると沈殿物や浮遊物(カビ)が見られるケースがあります。これらは、システムの汚染とともに、サンプルそのものにも影響を与えてしまいます。各種溶液を継ぎ足すことは避け、液量が少なくなった場合はフレッシュなものに入れ替えるようにしてください。また、使用時にボトル内に析出物等がないかを確認する習慣を心掛けてください。
番外編 オートサンプラーのサンプルトレイが結露してしまう
VP-Capillary DSC/PEAQ-DSC Automated
特に梅雨時には、サンプルトレイの下に水たまりが現れることがあります。サンプルトレイの温度を、室温よりも大幅に低い温度に設定している場合に起こる現象です。
弊社のラボでは通常、室温(20 ℃など)に設定し、測定時にのみ目的のサンプルトレイの温度に変更しています。サンプルトレイの温度は室温 ± 10 ℃で設定が可能です。10 ℃以下で使用したい場合(例えば4 ℃)は室温にもご注意ください。また、測定終了後、室温との差が大きいまま長期放置しておきますと、冷却装置に負荷がかかる原因となりますので、室温に戻すようにしてください。
なお、長期間、低温で使用した場合、サンプルトレイの温度を室温に設定しなおしても、温度が上昇しないことがあります。そのよう場合は、いったんオートサンプラーの電源(2つとも)を落として、数時間程度、放置後、再起動してください。