MicroCal ITCメンテナンスに関するFAQ
*こちらの記事は、2019年12月に公開したものを編集したものになります。
実験装置のメンテナンスは信頼性のあるデータを取得するためにとても重要です。貴重なサンプルを測定する前に、装置が良好な状態であるかを把握しましょう!
こちらのブログでは、よくあるお問い合わせTop3と、その原因、及び対処方法についてご案内いたします。
MicroCal ITCシステムに関するよくあるお問い合わせの原因Top3
第1位 サンプルによるセル/シリンジの汚れ
システムが汚れているか否かは、超純水を用いたシステムチェックで確認します。
全機種共通の症状
- 普段のデータと違う
- データの再現性が出ない
第2位 ピペット/シリンジのトラブル
ピペット、シリンジのトラブルは物理的に破損、故障しているケースが多いです。特に、定期的に交換が必要なプランジャーチップやフィルポートアダプター(FPA)の摩耗には注意が必要です。
全機種共通の症状
- ニードルが曲がってしまった
- DP値が-30 μcal/sec付近から変わらずReference Powerの設定値に近づかない
- シリンジが割れてしまった
- 滴定量が一定ではないような気がする→プランジャーチップの摩耗
iTC200
- シリンジに水が流れない、または少ない量しか水が流れず洗浄できない
- シリンジにサンプルを充填したときに、プランジャーチップとサンプル液面の間の気泡が取り除けない
PEAQ-ITC
- ウォッシングモジュールのバキューム、またはフローのエラーでシステムの洗浄ができない
- シリンジにサンプルを充填したときに、プランジャーチップとサンプル液面の間の気泡が取り除けない
Auto-iTC200/PEAQ-ITC Automated
- シリンジを交換しようとしたが、固着して取り外せない
第3位 送液系のトラブル
送液系のトラブルも物理的に破損、故障しているケースが多いです。また、チュービングの接続が外れていたり緩んでいたりしています。
iTC200
- 装置から今まで聞いたことがない大きなモーター音がして、シリンジに水が流れない、または少ない量しか水が流れず洗浄できない
PEAQ-ITC
- 洗浄時にシリンジやチュービングに気泡が流れていて「Flow not detected」のエラーが出て洗浄ができない
番外編
☹ 洗剤が入っているボトルに浮遊物が見られるが問題ないか?
Auto-iTC200/PEAQ-ITC/PEAQ-ITC Automated
→ 問題ありです。至急フレッシュな洗剤に入れ替えてください。洗剤の使用期限は測定環境等で異なります。使用時にボトル内に沈殿やゴミ等がないかを確認する習慣を心掛けてください。
☹ PCが突然動かなくなった。解析ソフトウェアが突然解析できなくなった
VP-ITC/iTC200/Auto-iTC200
これらの装置は製造、販売が終了しており、使われているPCのOSもWindowsXPやWindows7などでWindowsのサポートが終了しています。また、PCそのものの老朽化が懸念されます。
日ごろから、大切なデータを外部媒体へ保存するように心がけてください。また、使用しない場合はPCの電源を落とすようにしてください。
- PCに不具合が見られた場合
→ PC内部にあるメモリボードの抜き差しをして改善することがあります。詳細につきましては、ヘルプデスクにお問い合わせください。メモリボードの抜き差しで改善されない場合は、弊社にて調整されたソフトウェアインストール済みPCの更新をお勧めします。(Windows10に対応したものを準備しております。)
- ソフトウェアに不具合が見られた場合
→ 不具合のある解析ソフトウェアをアンインストール後、英語版のユーザマニュアルに従い、再インストールをお願いします。アンインストールを行う前に、お手元に、解析ソフトウェアのインストーラがあることをご確認ください。インストーラは納品時期によって異なりますが、CDに「Analysis Software」の記載があり、シリアル番号の情報がケースに記されています。Originパッケージの中にあるインストーラCDではございませんのでご注意ください。お手元にインストーラがない場合は再発行(有償)が可能です。
引き続き、安定した状態でシステムを稼働させていただくためにも、PCまたはシステムの更新をお勧めしております。装置のサポート終了日は以下の通りです。
Auto-iTC200 2021年11月30日
iTC200 2024年 3月31日
VP-ITC 2026年5月31日
「セル/シリンジのサンプル汚れ」の対処方法
お問い合わせのほとんどが、セル/シリンジの汚れに起因する不具合です。これらのお問い合わせを受けたとき、我々はまず、システムの問題か、サンプルの問題かを切り分けるため、「システムチェック(水―水測定)」の実施をお願いし、そのデータを確認します。
【システムチェックのチェックポイント】
- DP値がReference Powerの設定値に近いこと
- 小さな滴下シグナルが繰り返し同じように出ていること
上記チェックポイントから逸脱する現象が確認されたら、マニュアルにある「汚れがひどいときの洗浄方法」で、セルとシリンジの洗浄を実施します。洗浄後、再度システムチェックを行い、データが改善されるかを確認します。
「システムチェック」や「汚れのひどいときの洗浄方法」はここからもダウンロードできます。
洗浄後のシステムチェックで、再現性のないピークやベースラインポジションに問題がございましたら、弊社にご連絡ください。その際、システムチェックのデータもご送付ください。
また、装置を稼働していなくても、定期的にシステムチェックを実施し、装置の状態をモニターすることをお勧めいたします。
「ピペット/シリンジのトラブル」の対処方法
☹ ニードルが曲がってしまった場合(DP値が-30 μcal/sec付近から変わらない)
全機種共通
以下の原因が考えられます。
- シリンジに触ってしまった
→ 特にiTC200は、ちょっと触れただけでもニードルが曲がりやすいので注意が必要です。PEAQ-ITC以降、ニードル形状が太くなり、曲がりにくくはなりましたが、こちらも注意が必要です。ニードルが曲がるとDP値が-30 μcal/sec付近から変わらない現象が起こります。これは、シリンジがセル内部と物理的に接触し、発熱し続けていることに起因します。シリンジを挿入しなおして改善された場合、シリンジがセルに正しく挿入されていなかったと考えられます。挿入しなおしても改善されない場合はシリンジの交換を行い、改善されるか確認してください。
- セルキャップをしたまま測定を開始してしまった
→ オートメーションシステムでセルキャップをしたままシステムをスタートさせたことでニードルが曲がったケースがあります。
- 新しいタイプのプレートシートの剥離面を外すのを忘れてしまった
→ 新しいプレートシートは3層構造になっています。剥離面の取り外しを忘れたことで、カニューラが曲がったケースがあります。
☹ シリンジが割れてしまった場合
全機種共通
以下の原因が考えられます。
- フィルポートアダプタ(FPA)をねじ込みすぎた
→ 特にiTC200で、FPAをねじ込みすぎたことでシリンジに亀裂が入るケースが多いです。慣れないうちは、経験者の指導の下、作業することをお勧めいたします。PEAQ-ITC以降は押し込むタイプになったため、シリンジが割れるケースは起こりにくくなっていますが、こちらも注意が必要です。オートメーションシステムの場合、システムの不具合が考えられますので、技術担当者にご連絡ください。
☹ シリンジに水が流れない、または少ない量しか水が流れず洗浄できない場合
iTC200
様々な原因が考えられます。原因究明のために「MicroCal iTC200 ピペットに溶液が流れないときの対処方法」の指示に従い、お客様ご自身でご確認いただくことができます。原因によっては修理が必要になります。
☹ ウォッシングモジュールのバキュームまたはフローのエラーでシステムの洗浄ができない場合
PEAQ-ITC
以下の原因が考えられます。
- FPAの密着不足、または不良
→ FPAは消耗品です。先端の黒い部分に傷がついたりしていないか確認し、垂直方法にやさしく装填します。あまり力を入れすぎるとFPAの先端の消耗が速くなりますので注意します。改善が見られない場合はFPAを交換します。(製品番号:PQA4007)
- シリンジのナットが緩んでいる
→ PEAQ-ITCではナットを緩める必要はありません。iTC200をご使用になられていた方がナットを緩められることがあるようです。ご注意ください。
☹ 滴定シリンジ内の気泡がFPAで取り除くことができない場合
iTC200/PEAQ-ITC
以下の原因が考えられます。
- シリンジのナットが緩んでいる
→ ナットが緩んでいないか確認してください(PEAQ-ITCではナットを緩める必要はありません。)
- 滴定シリンジの破損
→ 目視でシリンジのヒビを確認、破損している場合交換ください。
- FPAの詰まりや破損
→ FPA先端からワイヤーを通してください。先端に摩耗がみられるようならばFPAを交換します。
☹ 滴定量が一定ではないような気がする場合
全機種共通
プランジャーチップの摩耗が考えられます。プランジャーチップの交換を行ってください。交換は、測定に条件によって異なりますが、約300測定に1度行うことを推奨しています。交換を怠りますと、ピペット本体の故障に繋がる可能性がございます。
iTC200/Auto-iTC200ユーザの方はこちらより「プランジャーチップの交換方法」をご確認いただけます。
☹ シリンジを交換しようとしたが、固着して取り外せない場合
全機種共通
システムの洗浄が不十分な状態で、装置を長時間放置した場合などに起こります。また、プランジャーチップの定期的な交換がなされない場合に発生いたします。重度の固着では、シリンジの取り外しができなくなり、最悪のケースではピペットの故障に繋がります。納品時に同梱されているSyringe Removal Toolで外せる場合は問題ありませんが、無理に取り外そうとするとシリンジやピペット本体の破損につながりかねません。そのような場合は技術担当者に連絡をお願いします。

Syringe Removal Tool (製品番号:29031076)
iTC200/Auto-iTC200をお使いの場合
2024年3月31日にiTC200はオフィシャルサポートが終了いたします。
終了以降はシリンジやピペット等の部品が在庫限りで販売終了致します。
シリンジがピペットへ固着した場合、取り外し作業を承っておりましたが、サポート終了以降は、お手持ちの予備パーツがある場合にのみ作業を承ります。
iTC200/Auto-iTC200をお使いのお客様におかれましては、サポート終了前に、ご自身の装置でシリンジの固着が発生していないかご確認を頂くことを強くお勧めいたします。
シリンジが固着していないかは、基本的にシリンジのブラシ洗浄工程に従っていただく事で確認が可能です。工程を確認するには弊社公式YouTube動画が便利です。
下記をご参照いただき、お使いの装置に即した操作をお願い致します。
iTC200の場合はこちら
Auto-iTC200の場合はこちら
両装置とも、Remove Old Tipボタンを押し、Plungerの下降と同時にシリンジが動かない場合は、固着が発生していると考えられます。シリンジのニードルを曲げないように、Syringe Removal Toolを用いて取り外しを試みてください。
シリンジの固着は定期的なプランジャーチップの交換、シリンジのメンテナンスにより回避が可能となります。固着が初期の場合は簡単に取り外しができます。重度の固着が発生した場合は、シリンジの破損やピペットの破損に繋がります。
測定終了時にシステムチェックを実施し、以下のポイントを確認することで防ぐことが可能です。また、システムを稼働していない場合でも、定期的にシステムチェックを実施することをお勧めします。
【システムチェックのチェックポイント】
- DP値がReference Powerの設定値に近いこと
- 小さな滴下シグナルが繰り返し同じように出ていること
上記チェックポイントから逸脱する現象が確認されたら、マニュアルにある「汚れがひどいときの洗浄方法」で、セルとシリンジの洗浄を実施します。洗浄後、再度システムチェックを行い、データが改善されるかを確認します。
「システムチェック」や「汚れのひどいときの洗浄方法」はこちらからもダウンロードできます。
洗浄後のシステムチェックで、再現性のないピークやベースラインポジションに問題がございましたら、弊社にご連絡ください。その際、システムチェックのデータもご送付ください。
「送液系のトラブル」の対処方法
☹ 装置から今まで聞いたことがない大きなモーター音がしている場合
iTC200
以下の原因が考えられます。
- ウォッシングモジュールのフィルター詰まり
→ フィルターを交換することで、不具合が解消されるケースがありますのでシステム納品時に同梱されているフィルターに交換してみてください。ただし、システムが納品された時期によって、フィルターがウォッシングモジュール内部にセットされており、写真のようにフィルターが見えない場合があります。その場合は、お客様による交換が難しいため、弊社技術担当者にご連絡ください。

☹ 「Flow not detected」のエラーが出て洗浄ができない場合
PEAQ-ITC
以下の原因が考えられます。
- ボトルが空になってしまっている
→ 超純水、洗浄液、メタノールの残量が十分か確認します。
- FPAの密着不足、または不良
→ FPAは消耗品です。先端の黒い部分に傷がついたりしていないか確認し、シリンジに対し、垂直方法にやさしく装填します。あまり力を入れすぎるとFPAの先端の消耗が速くなりますので注意します。改善が見られない場合はFPAを交換します。(製品番号:PQA4007)
- シリンジのナットが緩んでいる
→ PEAQ-ITCではナットを緩める必要はありません。iTC200をご使用になられていた方がナットを緩められることがあるようです。ご注意ください。