動的光散乱法を利用したコロイド金の特性解明
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序論
コロイド金は興味深い特性を示す金ナノ粒子の懸濁分散液です[1]。試料の色は金粒子の大きさと形状に応じて決まります[2]。図1は、さまざまな粒径のコロイド金懸濁液を示しています。粒径が5nm以下の場合、黄色を呈し、5nm〜20nmは赤色を、100nm以上は青色を呈します。
水溶性溶液中の金粒子は、タンパク質や抗体などさまざまな生物学的高分子に強い親和性を与える負電荷を帯びています[3]。このため、コロイド金は現在DNA結合、イメージプローブ、および診断剤などさまざまな生物工学分野で応用されています[1,4,5]。また、コロイド金懸濁液は先端電子およびコーティング分野での応用を目指して開発が進められています[6]。
コロイド金のサイズ特性解明は、粒子の直径が均一であり、分散試料に凝集粒子がないことを確認するために非常に重要です。電子顕微鏡法がサイズ特性解明方法として広く用いられています[1,2]。図2はコロイド金試料の透過電子顕微鏡写真です。個別の金粒子を明確に見ることができますが、大多数は2つ以上の粒子で構成されるクラスターとして存在します。
電子顕微鏡法が粒子を視覚化する優れた方法であるとはいえ、統計的観点で見れば、せいぜい数十、数百個の粒子のみを測定するので十分ではありません。電子顕微鏡法では、さまざまなサイズの粒子を算出し、数に基づいた粒径を求める際に利用できます。
動的光散乱法(DLS)は分散中のナノ粒子のサイズを測定する非侵襲的な方法です。この方法は、ブラウン運動を利用して粒子懸濁液の時間的な散乱光の強度を測定します。これらの散乱光の強度変動を分析することで、粒径を知るための拡散係数を決定し、ストークス・アインシュタイン方程式を通じてこの係数から粒径を求めることができます。
本アプリケーションノートでは、動的光散乱を用いたコロイド金のサイズ特性解明法と電子顕微鏡法で得られた結果との差異について調べます。
実験
本アプリケーションノートのすべての測定はZetasizer Nano S を用いて25°Cで実施されました。Nano Sには633nmの波長を持つ4mW He-NeレーザーとAvalancheフォトダイオード(APD)検出器が含まれており、散乱された光は173°の角度で検出されます。
結果及び考察
図3はNano Sで測定したコロイド金溶液の強度粒径分布を示します。このグラフはさまざまな大きさの粒子(X軸)によって散乱される光(Y軸)の相対的な割合を示しています。こうして得られた粒径分布は、平均がそれぞれ13.6nmと339nmの2つのピークを持ちます。このピークの強度、体積、数に基づいた分析結果は表1に示されています。
測定した強度粒径分布は、試料に存在する凝集粒子がかなり多いことを示しています。しかしながら、この粒径分布を元に体積(または質量または重量)(図4)に変換すると、低濃度で凝集粒子が存在することがわかります。強度の結果を体積に変換する際、Mie理論を使用し、その際、粒子の屈折率(n)と吸光度(k)の値が必要です。こちらでは、それぞれ0.2(n)と3.32(k)を使用しました[9]。得られた体積粒径分布は、質量ベースで試料の90%以上が約13nm程度の小さな粒子で構成されていることを示しています。
この結果を図5に示される数での粒径に変換すると、平均が12.4nmの単一ピークを得ます。この結果により、この試料の特性を電子顕微鏡のような数に基づいた方法で解明する場合、視覚的に観察できる粒子のほとんどが小さな粒子であることがわかります。大きな粒子の存在は、十分な数を計算した場合にのみ見ることができるでしょう。数に基づいた解析では、この試料の凝集粒子が非常に少ないですが、これらの粒子がかなりの量の光を散乱するため、強度分布のピークの大部分を占めます(図3)。したがって、これらの試料を動的光散乱法と電子顕微鏡法で分析した場合、かなり異なる結果を得る可能性があります。
もし図2の試料を動的光散乱法で測定する場合、さまざまな粒子(単一粒子、2つの粒子の凝集、3つの粒子の凝集など)の分析は非常に困難です。このように、動的光散乱法は3つのサイズを持つ試料に対する分析法として推奨されるものではありません。
したがって、単一粒子と2、3または4個の粒子で構成される凝集粒子の混合物は、光のほとんどを散乱させる大きな粒子の影響を受けて、広範囲の単一ピークが現れます。z-平均直径と分散度の値は凝集粒子の存在に敏感です。z-平均直径は平均ハイドロダイナミック直径であり、分散度の値は分布幅の推定値です。この2つの値はすべて、動的光散乱に関する国際標準、ISO13321に従って計算されます[10]。
結論
動的光散乱法はコロイド金のサイズ決定に適した方法です。この方法は凝集粒子の存在に非常に敏感であるため、z-平均直径と分散度を試料の均一性を決定する方法として使用できます。
単一分散試料の場合、動的光散乱法と電子顕微鏡法で得られる結果は非常に近くなるべきです。しかし、多分散試料の場合、大きな粒子による散乱のため、動的光散乱法は電子顕微鏡法よりも大きな粒径の結果をもたらします。
参考文献
[1] M.A. Hayat (1989) Colloidal Gold:Principles, Methods and Applications,
Academic Press, New York.
[2] K. Miura and B. Tamamushi (1953)J. Electron Microscopy 1, 36-39.
[3] M. Horisberger and M.F. Clerc(1985) Histochem and Cell Biol. 82,219-223.
[4] A. Csaki, R. Möller and W.Fritzsche (2002) Expert Rev. Mol.Diagn. 2, 89-94.
[5] R. Tanaka, T. Yuhi, N. Nagatani,T. Endo, K. Kerman, Y. Takamura and E. Tamiya (2006) Anal. Bioanal.Chem 385, 1414-1420.
[6] T. Sato and H. Ahmed (1997)Applied Phys. Letters 70, 2759-2761.
[7] A.N. Shipway, E. Katz and I Willner (2000) 1, 18-52.
[8] P. Mulvaney, M. Giersig and A.Henglein (1992) J. Phys. Chem. 96,
10419- 10424.
[9] L. G. Shulz (1954) J. Opt. Soc. Am.44, 357-362 and 362-368.
[10] International Standard ISO13321 Methods for Determination of Particle
Size Distribution Part 8: Photon Correlation Spectroscopy, International Organization for Standardization (ISO) 1996.
Zetasizer Nano
Malvern InstrumentsのZetasizer Nanoは、静的、動的、および電気泳動光散乱測定が可能なハードウェアとソフトウェアが含まれた最初の商用機器です。Nano装置で測定できる試料特性には粒径、分子量、ゼータ電位があります。
Zetasizer Nano装置は、一般的に低濃度および少量試料の製薬および生体分子分野に適合するように設計されており、高濃度のコロイド応用分野を満たします。バックサポート光学装置と新たなキュベット容器設計を使用して、これらの独特の要件を満たします。その結果、Zetasizer Nanoの粒径および濃度仕様は、他の商用化された動的光散乱機器よりも優れています。つまり、粒径範囲は0.6nm〜6μmであり、濃度範囲は0.1ppm〜40% w/vです。
Zetasizer Nano Systemは特許取得済みのハードウェアのデザインだけでなく、機器制御およびデータ分析のための優れたソフトウェアを備えています。このソフトウェアは、独自の最適化アルゴリズムを使用して、各試料に合わせて必要な光学設定を自動化し、新しいユーザーの学習時間を最小化するように設計された「ワンクリック」測定、分析、およびレポートシステムを使用します。
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