混合ナノ粒子の分画およびサイズ評価 ―沈降速度法および動的光散乱法を用いて―

イントロダクション

新規な機能やより高度な機能を持たせるために、粒子のサイズはますます小さくなってきた。各種のナノサイズの粒子が作製され、各分野でその活用が図られている。ナノサイズの粒子の性能を高度に発揮させるには均一な大きさの粒子集団であることが望ましいが、実際に作製されたナノサイズの粒子は多くの径を持つ粒子の集合体である場合が多い。このため何らかの分画・精製をする必要がある。

ただ、従来執られて来た分画方法では直ちに適用することは困難な面がある。遠心分離法は粒子の沈降速度をもとに粒子を分画し、あるいは粒子径をも測定する方法として知られている。ナノサイズの粒子では沈降速度が極端に遅いため、超遠心分離を使用する。大量に処理することが難しく、且つ時間もかかることから敬遠気味な方法と考えられてきたが、ナノサイズ粒子の需要を反映して見直されつつある。

一方、高比重液(高密度液)を用いた分画は細胞やタンパク質・DNAなどで広く使用されている。ショ糖を始めとして、Percoll やFicoll などの商品名で販売されている。原理としては粒子の大きさによる沈降速度、または、密度差による分離法(沈降平衡法)である。

今回、2種類のラテックス粒子を混合したサンプルを用いて、ショ糖密度勾配液を用いた沈降速度法による分離を試みた。各分画は動的光散乱法(DLS)装置ゼータサイザーナノZSを用いて同定した。

材料および測定条件

2.1 材料

  • • 29 nm Latex (0.5%、1.115g/cm3、Polystyrene、JSR 社製)
  • • 100 nm Latex (0.025%、1.060g/cm3、Polystyrene、JSR 社製)

2.2 方法

2.2.1 前処理

I. 5%および15%のショ糖液を作製した。
II. 上記(1)で作製した15%ショ糖液に5%ショ糖液を加え希釈し、連続的に密度勾配液を作製した。(日立製密度勾配作製装置を使用)

2.2.2 遠心分離の実施

I. 連続密度勾配液:4.3 mL(液高:43.5mm)の上部に2種類のラテックス混合液:0.2mL を静かに載せた。
II. 遠心分離(40,000 rpm×60 分間)(日立製遠心分離機、スイングロータ使用)
III. 試験管を垂直に立て、ピペットで慎重に上部画分①を0.2 mL 採取した。つづいて上部画分②を0.2 mL を採取した。

2.2.3 測定

前期2.2.2-Ⅲにおいて採取した画分をポリスチレン製セミマイクロセルに入れ、DLS測定装置にて粒子径を測定した。なお粒子径の算出においては2.3.2 に示す粘度計算値を使用した。

2.3 測定方法

2.3.1 動的光散乱測定条件

装置:ゼータサイザーナノZS(Malvern 社製)
測定温度: 25 ℃
分散媒屈折率: 1.33(精製水使用)
分散媒粘度: 表1を参照
サンプル量: 0.2 mL
測定時間: 10 秒間×10 回

2.3.2 粘度計算方法

I. 移動距離割合を算出ショ糖密度勾を用いた遠心分離処理後の各分画の液上面からの高さを測定した。(図1)これを基にショ糖含有量を算出した。
II. 分散媒粘度の算出ゼータサイザーナノZS のソフトウェアの補正計算機能(complex solvent)を使用。


「測定結果および考察」は、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。

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