固形製剤における有効成分(API)の粒子サイズおよび形状は、溶出挙動および生体内吸収に直接影響する重要な品質特性である。特に高活性医薬品成分(HPAPI)は、低用量で強い薬理作用を示すことから、がんなどの重大疾患への有効性が期待されている。一方で、低用量でも高い毒性を有するため、厳格な封じ込め対策と安全な取り扱いが必須である。さらに、HPAPIは低溶解性である場合が多く、溶出性改善の観点から粒子形態制御の重要性が高い。溶出現象はNoyes–Whitneyモデルを仮定すると、試料の物理化学的溶解度が同一である場合、溶出速度は固体表面積に依存する。したがって、粒子形態の制御は、低溶解性薬物に対する有効な製剤設計戦略となる。
この粒子特性評価には、従来、レーザー回折法(LD)などが用いられてきた。LDは再現性が高く、広範囲の粒子径分布評価に適するが、粒子形状情報を取得できない。また、比較的多量の試料(>100 mg)を必要とし、大型アイソレーターなどの設備を要する。一方、マニュアル顕微鏡による画像解析は粒子径と形状を同時に取得できるものの、観察者バイアスが大きく、統計的妥当性を満たす粒子数を確保するには膨大な作業時間を要する。これらの問題を解決するため、近年、湿式分散・薄層封入観察法(wet dispersion–thinly encapsulated sample observation, WD–TESO)と自動粒子画像解析(automated particle image analysis, APIA)を組み合わせた手法が開発された[1]。
この手法により、HPAPIに対して、安全性、コスト効率、および統計的妥当性を両立した粒子特性評価が可能となる。本アプリケーションノートでは、先行研究を参照し、その有効性を検証する。
固形製剤における有効成分(API)の粒子サイズおよび形状は、溶出挙動および生体内吸収に直接影響する重要な品質特性である。特に高活性医薬品成分(HPAPI)は、低用量で強い薬理作用を示すことから、がんなどの重大疾患への有効性が期待されている。一方で、低用量でも高い毒性を有するため、厳格な封じ込め対策と安全な取り扱いが必須である。さらに、HPAPIは低溶解性である場合が多く、溶出性改善の観点から粒子形態制御の重要性が高い。溶出現象はNoyes–Whitneyモデルを仮定すると、試料の物理化学的溶解度が同一である場合、溶出速度は固体表面積に依存する。したがって、粒子形態の制御は、低溶解性薬物に対する有効な製剤設計戦略となる。
この粒子特性評価には、従来、レーザー回折法(LD)などが用いられてきた。LDは再現性が高く、広範囲の粒子径分布評価に適するが、粒子形状情報を取得できない。また、比較的多量の試料(>100 mg)を必要とし、大型アイソレーターなどの設備を要する。一方、マニュアル顕微鏡による画像解析は粒子径と形状を同時に取得できるものの、観察者バイアスが大きく、統計的妥当性を満たす粒子数を確保するには膨大な作業時間を要する。これらの問題を解決するため、近年、湿式分散・薄層封入観察法(wet dispersion–thinly encapsulated sample observation, WD–TESO)と自動粒子画像解析(automated particle image analysis, APIA)を組み合わせた手法が開発された[1]。
この手法により、HPAPIに対して、安全性、コスト効率、および統計的妥当性を両立した粒子特性評価が可能となる。本アプリケーションノートでは、先行研究を参照し、その有効性を検証する。
モデル試料としてアセトアミノフェンおよびイブプロフェンを用い、分散媒には不溶性かつ低蒸気圧の液状パラフィンを選定した。試料は体積約1 mm³の微量を採取し、約200 µLの分散媒中で針を用いて穏やかに分散させた後、カバーガラスで封入して薄層化した。概要をFig. 1およびFig. 2に示す。Morphologi 4を用い、透過光観察条件、対物レンズ5倍にて、標準作業手順(SOP)に従い自動測定を実施した。1試料あたり約4,500~8,000粒子を約7分で測定した。画像解析では、粒子重なりおよび欠陥粒子を除外するため、solidity < 0.90の形態フィルタを適用し、一次粒子データのみに基づく解析を行った。
Fig. 1 Overview of the WD–TESO + APIA protocol.
Fig.2 Sample preparation procedure.
WD–TESO法で調製した試料は、コントロールとして用いた乾式分散試料と比較して、粒径分布に顕著な差は認められなかった。さらに、デンドログラムによる可視化においても、アセトアミノフェンとイブプロフェン間の差異と比較して、同一試料内での乾式・湿式間の差異は僅少であることが確認された(Fig.3)。以上より、本手法の有効性が示された。また、形状指標の解析により、イブプロフェンはアセトアミノフェンと比較して円形度およびアスペクト比が高く、より等方的な形状を有することが示された。したがって、適切な分散条件下ではWD–TESO法により乾式法と同等の形態解析が実施可能であることが確認された。
(a)
(b)
(c)
Fig.3 Particle size and shape distributions and dendrograms for assessing similarity between dry and wet dispersion for each sample. Acetaminophen is shown by the blue line and ibuprofen by the dark blue line. (a) Volume-based CE diameter, (b) HS circularity, (c) aspect ratio.
本手法(WD–TESO+APIA)は、従来のレーザー回折法(LD)と比較して、試料消費量、設備投資、作業時間のすべてにおいて大幅なコスト削減を可能とする。
WD–TESO法では体積約1 mm³のサンプリングにより、約0.2–0.6 mgの極微量試料で測定可能である。一方、LDでは一般に約100 mgの試料を必要とするため、試料コストは約150~500分の1に低減される。
LDによるHPAPI測定では大規模なアイソレーター設備が必要であり、その導入コストは数万ドル規模に及ぶ。一方、WD–TESO法では小型または簡易な封じ込め環境で対応可能であり、装置導入コストを含めてもLD比で約4%(最大約96%削減)まで低減可能である。
従来の手動画像解析では約5,000粒子の解析に約1.7時間を要するのに対し、APIAを用いることで約7分で解析が完了する。この結果、作業時間は約10~20分の1に短縮され、オペレータ負荷の低減とスループット向上が実現する。
さらに、封じ込め環境の簡素化により、個人防護具(PPE)や洗浄溶媒の使用量削減が可能となる。また、湿式分散の導入により粉体飛散リスクを抑制でき、大型専用設備への依存低減にも寄与する。
以上より、本手法はHPAPIのような高価かつ取り扱い制約の大きい試料に対し、試料コスト、設備投資、作業工数の三要素を同時に最適化する実用的手法である。
WD–TESO法とAPIAの組合せにより、粒子形態評価におけるコスト構造は大きく変革される。具体的には、試料消費量は最大で約500分の1、設備コストは約96%削減、作業時間は最大で約20分の1に低減される。本手法は、HPAPIのような高コストかつ高リスク材料に対し、安全性を維持しながら包括的なコスト削減を実現する粒子分析手法であり、特に製剤開発初期段階における効率的な評価手段として有用である。
[1] Sasakura, D. (2026). Cost-effective particle characteristics for highly potent active pharmaceutical ingredients using particle image analysis with thinly encapsulated sample observation methods. Journal of Drug Delivery Science and Technology, 116, 107905.
https://doi.org/10.1016/j.jddst.2025.107905