湿式流動層造粒におけるマイクロサンプリングプローブを用いた少量・リアルタイム粒子径分布測定の適用

粒子径分布(PSD)は、粉体の流動性、圧縮性、含量均一性、および溶出挙動に直接影響を与えるため、医薬品製造における重要品質特性(CQA)の一つです。湿式流動層造粒では、核形成、凝集、緻密化、乾燥といったメカニズムによって粒子が継続的に変化するため、PSDも工程全体を通じて変動します。こうした複雑かつ非線形な変化を把握するため、製造現場ではリアルタイムで造粒成長を監視し、プロセス管理を向上させるProcess Analytical Technology(PAT)ツールへの関心が高まっています。

造粒プロセスモニタリングの課題

湿式流動層造粒は、医薬品製造で最も広く利用されている粒子設計技術の一つです。しかし、粒子成長のダイナミクスはバッチ中に変化するため、最適な終点を判断することは容易ではありません。従来のオフラインサンプリングでは、プロセスの限られた時点しか評価できず、重要な変化をリアルタイムで捉えられない可能性があります。

リアルタイムレーザー回折法(RT-LD)は、50 μm未満の微粒子を含む幅広い粒子サイズを正確に測定できるため、連続的な粒子径測定技術として注目されています。従来のオンラインモニタリングシステムでは、Closed-Loop Circulation(CLC)方式が一般的に使用されており、粉体を造粒機から測定セルへ連続的に搬送し、再びプロセスへ戻します。有効な手法である一方、サンプル滞留時間、配管壁への付着、連続搬送、および設置要件に関連する課題が生じることがあります。

オンラインPSD測定への新しいアプローチ

近年開発されたMicro Sampling Shutter(MSS)プローブは、リアルタイム粒子径分析の新たなアプローチとして注目されています。連続循環ではなく、シャッターを機械的に開閉することで、測定が必要なときだけ少量の粉体を採取する間欠サンプリング方式を採用しています。

この設計により、サンプリングシステム内での粒子滞留時間を最小限に抑えながら、パージエアによって粉体の蓄積やキャリーオーバーも低減できます。長時間の搬送や付着による測定アーティファクトの発生を抑制し、造粒機内の粒子状態をより代表的に反映した測定結果が期待できます。

測定手法の概要

本アプリケーションノートでは、湿式流動層造粒工程におけるMSS技術とリアルタイムレーザー回折法の組み合わせについて検証しています。モデル製剤を用いた比較試験を実施し、従来のCLCサンプリング方式とMSSサンプリング方式の双方で粒子径分布をモニタリングしました。

Dv10、Dv50、Dv90といった主要なPSD指標を造粒工程全体を通じて追跡し、それぞれの手法が粒子成長挙動をどの程度正確に捉えられるかを評価しました。これらの体積基準パーセンタイル値は、粒子径分布全体の変化を把握するための重要な指標であり、医薬品のプロセス開発および製造において広く利用されています。

本資料で取り上げる内容

本アプリケーションノートでは、以下のトピックについて詳しく解説しています。

  • 湿式流動層造粒におけるリアルタイム粒子径分布モニタリング
  • 医薬品プロセス解析のためのPATツールとしてのレーザー回折法
  • 間欠サンプリング方式と連続サンプリング方式の比較
  • サンプル滞留時間が測定信頼性に与える影響
  • サンプリングバイアスおよび測定アーティファクト低減のための戦略
  • オンラインPSDモニタリングシステム導入時の実践的な検討事項
  • 製造の柔軟性向上とプロセス理解深化の可能性

なぜこの研究が重要なのか

医薬品メーカーがQuality by Design(QbD)の考え方やデータ駆動型製造戦略を導入する中で、正確なリアルタイムプロセス情報へのアクセスはますます重要になっています。信頼性の高いオンラインPSD測定は、プロセス理解の向上、バッチ間の一貫性改善、より適切な意思決定、およびPAT活用の強化に貢献します。

サンプリング技術の進歩により、レーザー回折法による粒子径測定の利点を維持しながら、従来のモニタリングシステムに伴う実務上の課題を克服できるようになってきました。造粒工程の最適化とプロセス制御の強化を目指す組織にとって、各サンプリング手法の特長と限界を理解することはますます重要になっています。

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ご登録いただくと、実験セットアップ、サンプリングシステム設計、粒子径測定結果の比較、およびMicro Sampling Shutter技術を用いたリアルタイムPSDモニタリングに関する詳細な考察をご覧いただけます。先進的な粒子径測定技術が、医薬品プロセス開発、PAT推進、および造粒プロセスの理解向上にどのように貢献するかをご確認ください。

はじめに

粒子径分布(PSD)は、流動性、圧縮性、含量均一性、および溶出挙動に直接影響を与える重要品質特性(CQA)の一つです。本質的にバッチプロセスである湿式流動層造粒では、核形成、凝集、および緻密化の進行に伴いPSDが非線形に変化するため、終点の判断やプロセス制御が困難となります。そのため、流動層造粒工程中のリアルタイムPSDモニタリングは、有望なプロセス監視手法として注目を集めています。

利用可能な技術の中でも、Insitec®のようなレーザー回折法ベースのオンライン粒子径分析装置は、50 μm未満の微粒子まで適切にサンプリングできるため、有力な選択肢となっています。しかしながら、その実装にはいくつかの課題が残されています。

従来、このようなプロセスにおけるオンラインPSDモニタリングは、圧縮空気を用いて粉体を搬送するClosed-Loop Circulation(CLC)方式と、Real-Time Laser Diffraction(RT-LD)を組み合わせて実施されてきました。CLC方式は高い時間分解能で連続測定を可能にする一方で、粉体の継続的な搬送による過度な乾燥が、スケールによっては造粒プロセスに影響を及ぼす可能性があります。また、医薬品製造では外部空気の導入によるコンタミネーションリスクも懸念されます。

近年、Micro Sampling Shutter(MSS)プローブが開発され、間欠サンプリングによるRT-LDアプローチが可能となりました [1]。本アプリケーションノートでは、MSS方式と従来のCLC方式の測定性能を比較評価した結果を報告します。

技術的背景

従来のCLC方式では、粉体を負圧によって連続的に吸引し、測定セルを通過させた後、プロセスへ戻します。そのため、サンプルは搬送ライン内を循環し、滞留時間や配管壁への付着の影響を受ける可能性があります。

これに対し、MSS方式では機械式シャッターによってサンプリングポートを間欠的に開閉し、必要なときにのみ少量のサンプルを採取します。シャッターが閉じている間もパージエアを維持することで、粉体の堆積やキャリーオーバーを最小限に抑え、サンプル滞留時間に起因する測定バイアスを低減します(図1)。

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図1. 流動層造粒工程におけるリアルタイムレーザー回折法(RT-LD)による粒子径測定のための、従来型Closed-Loop Circulation(CLC)サンプリング方式とMicro Sampling Shutter(MSS)方式の比較。

実際のシステム構成および設置例を図2および図3に示します。また、CLC方式では各単位操作ごとに専用配管が必要であるのに対し、MSS方式ではクイックコネクト設計を採用しており、ポータブルユニットとして運用できるため、複数の装置間で共有することが可能です(図3)。

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図2. Micro Sampling Shutter(MSS)プローブの外観写真および模式図。プローブはシャッターを開閉することで粉体を間欠的に採取し、回収したサンプルを粒子径分析のために搬送します。
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図3. MSSを用いたオンライン粒子径測定システムの実験セットアップ。MSSプローブは流動層造粒機の標準サンプリングポートに設置され、ポータブル型リアルタイムレーザー回折(RT-LD)装置に接続されています。挿入図には、造粒機内部におけるプローブの位置およびシャッターの開閉動作を示しています。

方法 / 実験アプローチ

共同研究先の施設において製造されたプラセボ製剤を用い、モデル湿式流動層造粒を実施しました。2つの独立したバッチを準備し、一方をCLC方式、もう一方をMSS方式で評価しました。粒子径測定にはInsitec®システムを使用しました。MSS方式では、あらかじめ設定した時間間隔でサンプルを間欠採取し、短時間の測定期間で取得したデータを平均化することでPSDを算出しました。結果を図4に示します。

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図4. 従来型Closed-Loop Circulation(CLC)システムおよびMicro Sampling Shutter(MSS)システムを用いて測定した、流動層造粒工程中のDv10、Dv50、Dv90の経時変化。

結果と考察

Dv10、Dv50、およびDv90は、MSS方式およびCLC方式のいずれにおいても、造粒時間の経過とともに一貫して増加しました。本アプリケーションノートでは、20分から80分までの安定化期間に着目して解析を行いました。MSS方式とCLC方式で得られた測定結果は全体的によく一致していました。特に、Dv50およびDv90については両方式間の差はごくわずかでした。Dv10では比較的大きなばらつきが観察されましたが、粒子径変化の傾向は両方式で一貫して捉えられていました。

これらの結果は、MSS方式が連続サンプリング方式と同等のPSD追跡性能を提供できることを示しています。また、パージエアを維持することでサンプル滞留時間が短縮され、配管壁への付着や再凝集に起因する測定バイアスが抑制される傾向が確認されました。

さらに、MSS方式は連続的な配管インフラを必要とせず、1台のシステムを複数の装置で共有できるため、設備投資コストを大幅に削減できる可能性があります。間欠サンプリングによる短いサンプル滞留時間により、湿潤条件下でも測定アーティファクトの影響を受けにくい粒子径測定が可能となります。

結論

MSSプローブを用いた間欠サンプリングRT-LDは、湿式流動層造粒において、従来のCLC方式と同等のPSD追跡性能を示しました。さらに、サンプル滞留時間の短縮と優れた可搬性により、柔軟なProcess Analytical Technology(PAT)として有望であることが示されました。

謝辞

本アプリケーションノートは、東和薬品株式会社との共同研究成果に基づいています。詳細については、引用文献をご参照ください。

[1] Sasakura, D., Sato, F., Horie, K., & Nakayama, K. (2026). A Flexible and Cost-Effective Real-Time Particle Size Monitoring Approach Using a Portable Micro-Sampling Probe in Fluidized Bed Granulation. Journal of Pharmaceutical Innovation, 21, 275. https://doi.org/10.1007/s12247-026-10553-7