MicroCal導入事例: 神奈川工科大学 応用バイオ科学科 小池研究室様

神奈川工科大学応用バイオ科学科小池研究室の小池あゆみ教授に、分子間相互作用解析装置MicroCal PEAQ-ITC Automatedをご使用いただいた感想や、研究成果についてお伺いしました。

小池先生は、近年医薬において注目されるドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する研究をされています。DDSは化学的安定性が低い薬剤を安定的に生体内の目的となる腫瘍細胞などに配達する手法で、疾病の予防や治療法開発につながる技術です。小池先生が遺伝子組み換えにより開発したシャペロニンを活用したDDSは、画期的ながん治療などとして大きく期待されています。

お話を伺ったのは: 
神奈川工科大学応用 バイオ科学科 小池研究室 小池あゆみ教授  

研究室について詳しくはこちら:  
http://kait-senryaku.com
https://www.kait.jp/ug_gr/undergrad/bio/bioscience/academic/koike.html

MicroCal ITCで従来モデルを数値的に証明

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シャペロニンというタンパク質の研究をしているのですが、反応機構を解析していく上で、従来は二つのリングが片側ごとに活性化されて働くと言われていました。私たちは2008年の論文で、二つのリングが同時に活性化した状態がシャペロンにはあると発表しているのですが、このITC装置を使ってその状態を検出し、数値的に裏づけできたのが大きな成果です。活性は結合度を用いて測っています。

ITCは結合の熱を数値的に見るので、反応機構を見ているかのように想像できて、他の装置にはない魅力がありますね。

MicroCal ITCで出た異常なデータが、特許出願につながる発見に

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あるときITCで計測中に、異常なデータが得られるようになりました。その現象は、凝集が起きている可能性を示していました。経験上、「そんなことがあるはずない」と思いましたが、生徒から何度も測っても一定の濃度を超えると同じ現象が起こると言われ、見直すことにしました。

結果としては、この異常なデータが、特許出願につながる発見だったのです。他の測定装置で計測したときは、通常ならば見過ごすレベルで、異常ではないような変化だったので気づかなかったのですが、ITCは感度が高いので、この変化を捉えられたのでしょう。

後から見直してみると、他の測定装置でも微小な変化が起きており、実は様々なデータで示されていたことがわかりました。

DLSとの組み合わせ解析でより確実な結論に

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ITCで異常が出たサンプルを回収し、DLS(ゼータサイザー)でも見てみたところ、シャペロニンのサイズが大きくなっており、またそれが凝集とは明らかに異なっている結果が示唆されました。さらに調べたところ、シャペロニンが規則正しくチューブ上になっていることがわかりました。

この内容について、「イノベーション・ジャパン2018」というイベントで「薬物を内包し、可逆的に重合/脱重合するタンパク質性ナノテープ」というテーマで発表しています。この技術は、薬剤カプセルの局所集積、薬剤濃度をチューブ長で制御したり、複数種類の薬剤をも併せ持つ薬剤ナノテープとして細胞周囲に配置する、等DDSキャリアとしての応用を可能にします。(発表詳細はこちら:https://www.ij2018.jp/exhibitor/jss20180434.html

難しい装置ではあるが、万全のサポートで安心

最初は測定がうまくいかなかったので、苦労していましたが、丁寧に教えていただいて、測定がうまくいくようになりました。また、繊細な装置ゆえ、最初は故障もあったのですが、電話するとサポートの方がすぐ来てくださったので、良かったです。そういった意味では、保守契約は外せないですね。一度止まってしまうと立ち上げるのに重い装置なので、メーカーの方と一緒に良い状態に保っていけたらと思います。

今では、ITCは大学ラボツアーの目玉装置になっています。バイオ分野以外の方に、「ひとつの分子にこういうものが結合したときの反応の様子がわかる」と伝えると、「今はこんなことができる装置があるんですね」と驚かれます。研究室のメンバーにも、この装置を使い倒してもらいたいですね。

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小池研究室の皆様、ありがとうございました! マルバーン・パナリティカルは、物性評価のエキスパートとして、 皆様の研究をサポート致します。

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