SEMを用いた粒子解析 ~特徴を生かした評価系の構築~

SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた画像解析(IA)による粒子解析は、微細粒子の形状・サイズ・表面構造を高精度に評価できる重要な手法です。

特に近年普及が進む卓上SEMは、光学顕微鏡(OM)に匹敵する操作性を備えつつ、OMでは捉えられないナノレベルの表面構造を鮮明に観察できます。また、X線分析装置(EDXなど)と組み合わせることで、元素分布の可視化や含有元素種の推定も可能となり、粒子解析に新たな知見を提供しています。

課題

一方で、IAには普遍的な課題があります。
観察・解析の過程で観察者の主観的な誤差が入りやすく、さらに実用的な時間内で統計的に有意な粒子数(例:数万個)を取得することが困難になり得ます。

粒子数に関する推奨値については複数の研究や規制文書で提示されており、多くの場合、数万個規模の粒子取得が推奨されています[1–3]。

しかし、作業の労働集約性やスループットの制約のため、その推奨値を満たすことは容易ではありません。計算解析の一部が自動化されている場合でも、画像取得には精密なコントラスト・フォーカス調整が求められ、オペレータに大きな負担がかかります。

したがって、粒子測定に限っていえば、大規模データセットに対する手動IAは依然として実用的ではなく、高スループットかつ自動化された堅牢な代替手法の必要性が浮き彫りとなっています。

こうした課題に対し、先行研究では簡易モデルによる作業時間の試算が行われています[4]。

試算内容の概要

■ 仮定

手動のSEM画像解析により、統計的に十分な粒子数(5万個を想定)を評価する。

■オペレーション

撮像および画像処理による解析を前提とし、画像解析にはソフトウェアの自動化機能を併用する。

■ 結論

解析作業には、最低でも1作業日(約8時間)相当の拘束が必要。

前提条件や試算シナリオの詳細をご覧になりたい方はこちら

したがって、母集団(全体)の評価については、ある程度代替的な手法で効率化し、SEM本来の強みである微細構造の詳細解析は別途切り分けて行うことが、合理的かつ最短で評価系を構築するうえで有効と考えます。
実務では、他の代替技術を利用すれば、簡便に、かつ、統計的に充分に満たすための処理時間を大幅に短縮することが可能です。

代替技術

手法時間測定レンジ得られる情報特徴
ナノトラッキング法10分50nm~数百nm個数基準粒子径分布粒子を散乱光情報で可視化して解析するため、真度が高く、希薄溶液でも測定出来る。
画像解析法10分~1時間以内0.5μm~1000μm程度粒子径、形状、外観など包括的形態情報顕微鏡による直接観察を自動化することで、真度、情報量が多い。
レーザー回折数秒~数分nm~㎜体積基準粒子径分布迅速で最も幅広いレンジで粒子径を見積もることのできる手法。分析量も多く、平均化ができる。

さらには、元素分析においても粒子数(すなわち分析量)が課題となる場合があります。金属などの塊状材料における元素偏在分布の解析は、分析電子顕微鏡の概念として古くから研究されてきた基礎的で重要なテーマです[5]。

一方、粒子材料の場合には、各粒子ごとの偏析や元素種の特定よりも、むしろ粒子集合体としての粉体材料に含まれる平均的な元素量を把握することが重要となります。そのような目的に対しては、蛍光X線分析が有望な手法となります。

手法特徴
波長分散型 蛍光X線歴史があり、軽元素などに強みを持つ。高輝度のX線源を使えるので元素によっては感度が高い。半定量分析に対応
エネルギー分散型 蛍光X線装置が卓上、小型で、簡便に測定ができる。多元素同時分析が可能。半定量分析に対応

結び

以上のように、SEMを用いた粒子解析は高い情報量と多角的な評価を可能にする一方で、必要粒子数の確保や作業負荷の増大といった課題を抱えています。また、元素分析においても、粒子集合体としての平均的な元素量の把握が重視される場合には、分析量の確保が重要となります。これらの点を踏まえると、従来の手動SEM観察に依存した手法だけでは、高精度かつ統計的に十分なデータ取得を効率的に行うことは難しいといえます。

今後は、SEM観察とデジタル画像解析の高度な自動化、あるいは蛍光X線分析などの代替技術を適切に組み合わせることで、より高い信頼性とスループットを両立させた粒子解析が求められていくと考えられます。

関連資料

先行研究[4]

粒子画像解析における運用効率評価

前提条件(主要シナリオ)

  • 粒子の重なりや接触を最小限に抑えるため、1フレームあたり約200粒子を撮影
  • 5,000粒子のデータ取得には25フレームが必要
  • すべての画像は熟練オペレータが手動で取得
  • 取得後はデジタル画像解析による後処理を実施

このシナリオにおける課題

  • フレーム間およびサンプル間で比較可能な信頼性を確保するため、画像取得時のコントラスト・フォーカスを正確に管理する必要がある
  • 画像取得は高度な注意力を要し、オペレータの負荷が大きい
  • 熟練者でも、1フレームの取得に数分を要する
  • 後処理(重なり確認、二値化など)にも1フレームあたり数分を要する

作業コストの試算

  • 画像取得と後処理は、それぞれ1枚あたり約2分、合計で約4分
  • 25フレーム(約5,000粒子)の解析には、1サンプルあたり約100分(約1.7時間)
  • 自動化(バッチ処理、マクロ等)により後処理が高速化可能だが、短縮幅は約50%が限度

以上から、手動SEMによる粒子解析では、画像データの自動化を併用しても最低でも1サンプル5000個あたり約50分(約0.8時間)となります。

従って100個あたり1分必要であり、先行研究で指摘されている、統計的に有望と推定される50000個を解析しようとすると、

50000/100=500分(約8時間)

という膨大な時間がかかることが推定できます。

[1]ISO13322–1:2014 (2014) Image analysis methods – Part 1: Static image analysis methods

[2]Yoshida H, Mori Y, Masuda H, Yamamoto T (2009) Particle size measurement of standard reference particle candidates and theoretical estimation of uncertainty region. Advanced Powder Technology 20:145–149.

[3]Masuda H, Gotoh K (1999) Study on the sample size required for the estimation of mean particle diameter. Advanced Powder Technology 10:159–173.

[4]Sasakura, D.: Cost-effective particle characteristics for highly potent active pharmaceutical ingredients using particle image analysis with thinly encapsulated sample observation methods. Journal of Drug Delivery Science and Technology. 116, 107905 (2026).

[5] 竹山太郎; 大貫惣明. 分析電子顕微鏡法と金属材料への応用. 日本金属学会会報, 1983, 22.7: 646-652.