SiO2スラリーサンプルの特性解明における光散乱法の利用

 

 

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 序論

  研磨スラリーはシリコンウェハ表面の物質を除去し、不規則な面を平坦にして追加回路素子を組み立てるためのウェハ表面を準備するために使用されます。ウェハの微細な曲面は使用されるスラリーのサイズ分布に関連します。サイズは後に処理される誘電体薄膜の不均一性に影響を与えるためです。スラリー粒子の表面電荷でスラリーの安定性が決定されるため、ゼータ電位も研磨プロセスに影響を与える可能性があります。

 

  本研究では二種類のシリカスラリーを利用し、サイズ、分布および表面電荷特性を調査するために光散乱法を利用しました。  
 

実験


  スラリー粒子は動的、静的および電気移動光散乱測定が可能なZetasizer Nano ZSを使用して測定しました。 

 

   サンプル準備


  スラリーサンプルはCabot Microelectronics Corporation(台湾)から提供いただきました。サンプルAとサンプルBのどちらもシリカ粒子です。サンプルAはpH約2.5〜4のアンモニウム塩溶液に分散され、サンプルBはpH10のKOH水溶液に分散されます。二つの分散サンプルのゼータ電位をMPT2自動滴定器を用いてpH値を様々に適用して測定しました。 

 

結果 

 

  サイズ測定

  図1にはサンプルAの粒子濃度に対する粒子サイズが示されています。希釈区間(c < 0.04 wt %)では粒子のサイズが一定であることが観察されます。高濃度区間では濃度増加に従いサイズが縮小する傾向を示しています。異なるキュベット位置で8% w/v濃度でサンプルAを測定した結果、サイズはキュベットの壁面からの距離とは無関係に現れました。これにより濃度によってサイズが縮小するのは多重散乱効果によるものではなく、粒子の静電気的相互作用によって拡散速度が速まるためであることが分かります。 

 


 

  濃縮効果は分散度(PDI)が濃度に応じて増加することでも観察されます。この効果をよく理解することは長範囲にわたり相互作用が発生し得る電気的二重層の帯電粒子を測定する際に特に重要です。濃縮効果を無視する場合は見かけのサイズと分散度だけを測定します。 

 

  サンプルAの粒子濃度を下げるために時間ごとに遠心分離を行いました。図2には遠心分離時間に基づくDLS法によって測定された粒子サイズが示されています。図から遠心分離時間が増加すると粒子サイズと分散度の両方が減少することがわかります。 

 

 

  また、粒子サイズが56nmから47nmに縮小しましたが、これは遠心分離過程で大きな粒子がキュベットからより急速に沈殿したためです。遠心分離はこのような多分散サンプルを分離する効果があります。すなわち、重い粒子を沈降させることで遠心分離時間に応じてPDI値を減少させます。

 

  ゼータ電位測定

  DLS法で測定したときに時間にしたがってサイズが縮小したスラリーサンプル(図2)を遠心分離時間に基づき測定した結果、粒子のゼータ電位は遠心分離時間とは無関係であることがわかります。(図3)したがってスラリー粒子のゼータ電位は粒子サイズに敏感でないことが確認できます。 

 

 

 

  自動滴定

  シリカ粒子の表面とその周辺の水溶性媒体には化学的平衡が成り立っています。粒子は周囲のpHにより陽子を得たり失ったりする傾向がありますが、これはゼータ電位に影響を及ぼす可能性があります。サンプルA、Bの両方のZetasizer Nano ZSとMPT2自動滴定器を用いて様々なpHに基づいてゼータ電位を測定しました。



   

 

 

  pHが粒子サイズに与える影響を確認するためにDLS測定も同時に実施しました。図4はサンプルAの自動滴定測定結果を示しています。測定はpH2.5〜9.5にわたり行いました。 

 





  KOH溶液を追加してpHを調整しました。低いpHでサンプルAが表面に陽電荷を帯び、pHが高くなるとゼータ電位が低下することが観察されます。  pH 6.03では分散が等電点に達し、この地点で表面の純電荷(net charge)は0になります。pHをさらに高くするとゼータ電位の符号が陽から陰に変わります。

 

 





 

  各pHに基づく粒子サイズを見ると等電点周辺で粒子サイズがかなり大きくなることを観察できます。HClをサンプルBに加えた結果図5を見ると、サンプルBのゼータ電位がpH3〜9.5の範囲で常に陰であることがわかります。

 



  pHが減少することに伴いゼータ電位も減少し、pHが6.5未満のとき 4mV以下のゼータ電位に応じてサンプルBの大きさが大きくなるが、これは凝集を防ぐための粒子間の静電的反発力が不足しているためと考えられます。

考察

  濃度がサイズとゼータ電位に与える影響影響

  今回の測定結果を通じて粒子の直径は自由にブラウン運動を行う希釈条件のみで一定であることが確認されました。粒子の相互作用が生じる高濃度では粒子の拡散が変動するため粒子のサイズが縮小し、このような相互作用はDLS測定では非常に重要ですが、しばしば無視されることがあります。

 

  塩含有量が少ない場合は帯電粒子の静電二重層が展開され、希釈溶液の場合はこのような相互作用が長距離で発生します。粒子間の相互作用を防ぐ適切な方法の一つは溶液に適量の塩を追加することで、それによって表面電荷を効果的に防ぐことができます。 

 



  遠心分離で最も大きな粒子を除去して見かけサイズを減少させましたが、粒子のゼータ電位は遠心分離による効果が見られませんでした。ここには二つの要因があります。一つはゼータ電位が粒子サイズに比較的敏感でなく、表面電荷密度の影響を受けるということです。もう一つの重要な要因は、遠心分離がゼータ電位に大きな影響を与えるpHおよびイオン強度などの環境条件を変えられないということです。

 



  pHがゼータ電位および粒子サイズに与える影響

  pHは表面電荷を変化させ、ゼータ電位に影響を与えます。粒子サイズと異なりゼータ電位は相対的な概念であるため、pHおよびイオン強度などの測定条件に言及せずにゼータ電位を述べることはできません。

 

  ゼータ電位は分散の安定性を示す指標です。



 

  一般的に粒子のゼータ電位が絶対値±30mV以上場合に安定性を持つ傾向があります。これはサンプルAとBの両方の自動滴定測定で観察することができます。 

 



  図4と5を見ると、粒子サイズは高いゼータ電位では一定し、ゼータ電位が-30mV未満のときには低い静電的反発力、つまりゼータ電位によりかなり大きくなることがわかります。これを理解することは非常に重要です。なぜなら粒子サイズ、分布および均一性は化学機械研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)の品質に直接的に影響を与えるからです。

結論

  DLS測定で帯電粒子のサイズと分散度はサンプル濃度に基づき変わります。粒子の実際のサイズを測定するためには、粒子の拡散速度に影響を与える静電的相互作用を考慮する必要があります。

 



  遠心分離はより小さな粒子を選択することで多分散サンプルの濃度と分布を変えることができます。これにより粒子サイズと分散度の両方が減少しますが、ゼータ電位は遠心分離とは無関係であることが明らかになりました。

 

  スラリーサンプルのゼータ電位はZetasizer Nanoで最大16% w/vの濃度まで測定可能です。遠心分離はpHおよび塩含有量などの化学的環境を変化させないため高濃度サンプルのゼータ電位を測定する良い方法です。

 

  最適なpH範囲を知ることはCMPスラリーの生産と応用の両方に有益かもしれません。

 

 

参考文献

1. Jea-Gun P, Takeo K, Ungyu P, Nanotopography Impact in Shallow Trench Isolation Chemical Mechanical Polishing-Dependence on Slurry Characteristics. Journal of Rare Earths, 2004; z2

2. W. R. Bowen, A. Mongruel, Colloid and surface A, 138, 161-172, 1998


3. Iler, R K, The Chemistry of Silica: Solubility, Polymerization, Colloid and Surface Properties, and Biochemistry; Wiley: New York, 1979