半導体材料の進化に伴い、高品質かつ均一な表面仕上げを実現することはますます困難になっている。特に SiC や GaN といった先進基板材料では、より高性能な研磨ソリューションが求められており、研磨スラリーの性能と安定性の重要性が高まっている。
ナノダイヤモンドスラリーは、材料除去速度(MRR)や表面品質の向上に大きな可能性を有している。しかし、その性能を十分に発揮するためには、粒子分散状態を精密に制御する必要があり、わずかな凝集でもプロセスの信頼性や歩留まりに影響を及ぼす可能性がある。
本アプリケーションノートでは、NanoSight Proを用いたナノトラッキング解析(NTA)により、ナノダイヤモンドスラリーの挙動を粒子単位で詳細に評価した結果を示す。高分解能な粒子特性評価によって分散状態の制御性向上を支援し、Chemical Mechanical Polishing(CMP)性能の最適化および表面欠陥リスク低減に寄与できることを示す。
半導体材料の進化に伴い、高品質かつ均一な表面仕上げを実現することはますます困難になっている。特に SiC や GaN といった先進基板材料では、より高性能な研磨ソリューションが求められており、研磨スラリーの性能と安定性の重要性が高まっている。
ナノダイヤモンドスラリーは、材料除去速度(MRR)や表面品質の向上に大きな可能性を有している。しかし、その性能を十分に発揮するためには、粒子分散状態を精密に制御する必要があり、わずかな凝集でもプロセスの信頼性や歩留まりに影響を及ぼす可能性がある。
本アプリケーションノートでは、NanoSight Proを用いたナノトラッキング解析(NTA)により、ナノダイヤモンドスラリーの挙動を粒子単位で詳細に評価した結果を示す。高分解能な粒子特性評価によって分散状態の制御性向上を支援し、Chemical Mechanical Polishing(CMP)性能の最適化および表面欠陥リスク低減に寄与できることを示す。
半導体製造におけるウエハ平坦化では、ラッピング(Lapping)とポリシング(Polishing)が用いられる。両者は表面を削る点では共通するが、目的・精度・メカニズムが大きく異なる。ラッピングは「形状を整える粗加工」、ポリシングは「表面を鏡面に仕上げる最終加工」である1)。(Fig.1)
ポリシングは、ラッピングで生じた表面の凹凸や加工変質層を除去し、原子レベルの平滑面を形成する工程である。柔軟なポリシングパッドと、シリカなどの微細砥粒を含むスラリーを用いて材料を精密に除去する。現在の半導体製造では、物理研磨と化学反応を組み合わせた CMP(Chemical Mechanical Polishing)が主流であり、化学的軟化を伴うことで高い平坦度と低ダメージ加工を実現している。Si ウエハではコロイダルシリカやセリアが一般的であるが、SiC・GaN など次世代パワーデバイス材料は極めて硬く化学的にも安定しているため、従来砥粒では MRR(Material Removal Rate)が低く、生産性が低下する2)。
ナノダイヤモンド粒子は、最高硬度を持つダイヤモンドを数 nm〜数十 nm に微細化したものであり、適切に分散させることで硬質材料に対し高速研磨を可能にする。また、物理研磨と化学反応を組み合わせたハイブリッド型 CMP の発展により、研磨効率と表面品質の両立が進んでいる3)。
典型的なプロセスは以下の通りである。
ナノダイヤモンドスラリーを CMP に用いる際、最重要となるのは 粒子分散の制御である。ナノダイヤモンドは表面エネルギーが高く凝集しやすいため、二次粒子が形成されるとウエハにスクラッチ欠陥を引き起こす。このため、分散状態を精密に評価する必要がある。
DLS(Dynamic Light Scattering)は簡便で広く利用されているが、CMP のような高精度用途では情報が不十分な場合がある。
一方、ナノトラッキング法(NTA)は、ナノ粒子を個数基準で直接測定でき、凝集粒子の割合を個数濃度として定量できる点が大きな利点である。さらに、NanoSight Pro が搭載する高分解能 FTLA 法により、従来手法では捉えにくい分布構造を解析でき、より高度な品質評価が可能である。
本アプリケーションノートでは、NanoSight Pro(NS Pro)を用いて ナノダイヤモンド粒子スラリーを測定した結果を示し、その有用性と応用可能性について述べる。
共同研究先より提供された ナノダイヤモンド を 1 mm³ 採取し、5 mL バイアルに分取した。0.01%界面活性剤を 2 滴添加して軽く混和し、5 mL にメスアップした。これをローターで 1 時間転倒攪拌し、CMP 水系分散を模擬したスラリーとした。
得られた原液を 1000 倍に希釈し、10 分間攪拌した後、50 mL バイアルを 2 本作製した。一方は直ちに測定(Before US)、他方は 10 分間の超音波バス処理(10 min US)を施した。
試料はシリンジポンプで NS Pro に供給し、405 nm レーザー、FTLA モードで 10 秒動画を 10 回取得し、合算して解析した。
NS Pro による粒度分布測定結果(Fig.2)より、10 分間の超音波処理によりナノダイヤモンドの分散状態が大きく改善したことが確認された。Before US では大粒子側にショルダーが見られたが、10 min US ではピークが狭く鋭くなり、粒子サイズがより均一に収束していることが明確である。これは NTA の高い分解能による特徴的な結果である。
定量的には以下の通りである。
さらに、NTA の特徴である光点の可視化により、単分散粒子の増加が Fig.3 で確認された。この現象は、凝集粒子による分散効果の主要な証拠となる。また、NSProソフトウェアで推定した粒子濃度は、超音波処理後に約1.2倍に増加したことを示している。D10・D50・D90 もすべて低下し、特に D90:216 nm → 187 nm(約 13% 減) は凝集粒子の解砕を示す重要な指標である。粗大粒子は CMP においてスクラッチの主要因となるため、D90 の減少はプロセス信頼性向上に直結するため重要である。
超音波処理における差異は、はいずれも粒径の約 15% 前後の変化として確認された。従来法では検出が難しい領域を NTA が明確に捉えたことを意味する。ここで得られた粒度分布のシャープ化の観察はスラリーの安定性、CMP 制御性、および MRR の再現性向上に寄与すると考えられる。
総合すると、NTA はナノダイヤモンド粒子スラリーの分散評価に極めて有効であり、CMP 工程におけるスクラッチ低減、表面品質向上、研磨プロセスの安定化に貢献することが示された。
本ノートで試料の提供を受けたGlobal Diamond社に深く感謝申し上げます。