DLS - 動的光散乱法

ナノ粒子を実用的に計測できる、最も良く知られ、実績のある分析手法

DLS - 動的光散乱法

動的光散乱法(Dynamic Light Scattering: DLS)は、溶液中のナノメートル(1×10-9m)オーダの微粒子を計測する、最も実用的、かつ、ISOにも記載(ISO 22412:2017)された簡便な手法として知られています。その原理は、溶液中におけるナノ粒子の「運動速度」を計測し、そのデータから各種の数値計算を利用して「大きさ=径」に換算することに基づきます。

このページでは、DLSの原理やDLSを用いた測定事例、DLS分析装置をご紹介します。

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DLSで何がわかるのか、わからないのか

DLSでわかること

動的光散乱法は、ナノ粒子やコロイド粒子を対象とした評価において非常に高い有用性を発揮します。溶液中に分散した粒子の平均的な粒子径を短時間で測定できるだけでなく、粒度分布の変化から分散状態や安定性を評価することが可能です。また、凝集や沈降といった経時的な変化を追跡することができるほか、多分散指数(PDI)を用いることで、粒子分布の均一性を定量的に把握することもできます。

ただし、多峰性分布や強い多分散系では、Z-averageのみで評価すると実態を十分に反映しない場合があるため、結果の解釈には注意が必要です。
一方で、すべての試料や条件に対して万能というわけではありません。例えば、強い多分散系における厳密な分布解析や、非常に高濃度で散乱が過剰となるサンプル、あるいは非球状粒子の詳細な形状評価といったケースでは、DLS単独での評価には注意が必要です。

DLSと他の粒子径測定手法との違い

粒子径測定には、DLS以外にも複数の手法があります。
手法 特徴 主な用途
DLS法 非常に短時間でナノ粒子を測定 分散安定性、品質管理
LD法 広い粒径範囲でミクロン粒子を測定 粉体・バルク材料
NTA法 個々のナノ粒子を可視化 低濃度ナノ粒子解析
目的やサンプル特性によって、最適な測定手法は異なります。 DLSは「迅速・再現性・実用性」に優れた手法として、多くの分野で選ばれています。

サンプル別アプリケーション(測定事例)

DLSは以下のようなサンプルに広く利用されています。

DLS測定でよくある課題と対策

DLS測定においては、再現性が思うように得られない、前処理の影響が測定結果に大きく反映される、あるいは得られたデータの解釈が難しいといった課題がしばしば挙げられます。しかし、これらの多くは装置性能の向上や、測定条件の適切な設計によって大きく改善することが可能です。

DLS技術の概要

動的光散乱法(Dynamic Light Scattering: DLS)は、溶液中のナノメートル(1×10-9m)オーダの微粒子を計測する、最も実用的、かつ、ISOにも記載(ISO22412:2017)された簡便な手法として知られています。その原理は、溶液中におけるナノ粒子の「運動速度」を計測し、そのデータから各種の数値計算を利用して「大きさ=径」に換算することに基づきます。
 
溶液中に微粒子(1μm以下)を懸濁(分散)させると、浮力と重力がつりあった状態であれば、粒子は沈降せずに自由に浮遊します。このときの浮遊状態は、溶液分子との各種の相互作用によって、液中微粒子特有の「ブラウン運動」と呼ばれるランダムな運動を始めます。この運動は、小さな粒子ほど速く、大きな粒子ほど遅くなることが知られています。
 
では、この粒子の速度をどのように計測するのか、考えてみましょう。この際に重要なキーワードは「レーザ」です。溶液中に懸濁している微粒子に良く位相のそろったレーザ光を照射すると、このブラウン運動の影響で粒子からの散乱光の信号は「揺らぎ(時間変動)≒光のちらつき」を持ちます。
 
この揺らぎの間隔とブラウン運動の速度には相関性があります。
 
つまり、
 
小さい粒子à 速い間隔で「揺らぐ」
大きな粒子à 遅い間隔で「揺らぐ」
 
という関係性です(図1.)。
 
図1.粒子径と散乱強度の揺らぎの相関
図1.粒子径と散乱強度の揺らぎの相関
 
ここで重要なのは、微弱な散乱光の「揺らぎ」を精度高く計測するためには、環境ノイズや振動などにも注意するほか、高精度な電子回路の設計と、レーザ光の位相・出力ができるだけ安定している必要があることです。とくにレーザに関しては、一般的に、半導体レーザよりもガスレーザのほうが発振する位相・出力ともに安定しているので、DLS測定に向いています。マルバーン・パナリティカルで、DLS装置にガスレーザを採用しているのはこのためです。
 
さて、精度高く散乱光揺らぎを計測すれば、あとは解析となります。ここで用いるのは、「液中分散したナノ粒子の大きさを見積もる場合、「拡散係数」と呼ばれる物理パラメータを用いると、粒子の大きさはその拡散係数に依存して計算できる」としたアインシュタイン・ストークス理論です。この拡散係数を見積もるために、散乱光信号の「揺らぎ」を「自己相関関数(Auto Correlation Function)」に変換します。この関数を用いて拡散係数を得ることで、平均粒子径や多分散指数を求める方法を光子相関法(Photon Correlation Spectroscopy:PCS)と呼びます。
 
図2.粒子径と自己相関関数の関係性
図2.粒子径と自己相関関数の関係性
 
この自己相関関数プロファイルの意味を少し考えてみます。(図3.)。自己相関関数が1の状態(Correlation 1)では、粒子はまだ動いていないので散乱強度に変化はありません。そこから時間が経過すると、粒子はランダムなブラウン運動を開始するので、一定時間が経過すると、「1」から「0」の状態に変化します。「1」から「0」になるということは、最初の位置から粒子がいなくなるので、散乱強度が減衰します。
 
粒子径が小さい場合、速いブラウン運動をしているので、1から0になるまでの時間が短くなるため、散乱光減衰の開始時間も早くなります。このため、自己相関関数が0に収束する時間が早くなります(図3.青線)。それに対して大きな粒子は、ブラウン運動が遅いために1から0になるまでに時間を要すため、自己相関関数の0に収束する時間が遅くなります。(図3.赤線)これらの挙動を表現するパラメータが拡散係数ということになり、自己相関関数プロファイルを解析することで、拡散係数を見積もることができます。
 
図3.小粒子と大粒子の自己相関関数
 図3.小粒子と大粒子の自己相関関数
 
自己相関関数に対して、各種数値計算(フィッティング)をすることで拡散係数を求め、粘度等のパラメータを考慮して、各種の「粒子径」を解析します。具体的には、「キュムラント解析」を実施すると、キュムラント径や多分散指数(分布の度合い)が求まりますし、「NNLS法(非負最小二乗法)」などの解析を実施すると、粒子径分布が得られます。(下図4.)
 
これらの計算法は複数あり、どの方式で解かれたかを理解することで、より多角的に解析を行うことができます。
 
図4.光子相関法の解析の流れ
図4.光子相関法の解析の流れ
 
DLSの測定原理やデータ解釈、測定時の注意点について、より詳しく理解したい方は、以下のガイドブックをご参照ください。
DLSは非常に汎用性の高い手法ですが、濃度や分散状態、分布の形によって結果の解釈が変わるため、原理理解が重要です。
 

DLSの原理を学べるトレーニング・ガイドブック情報

これまで述べてきたように、現実には、DLSは環境のノイズ成分、周期振動、光源そのものの揺らぎなども測定系に影響を及ぼします。さらに、数値フィッティングにより、分布幅や算出粒子径の大きさが変わります。したがって、測定は簡便な手法ですが、結果を正しく解析するためには、多くのことを理解することが、重要な手法になります。

マルバーン・パナリティカルでは、このような原理・現実に即したユーザ様向け・購入検討中のお客様向けのトレーニングを定期的に実施しています。また、トレーニング時にお配りしているPDFガイドブックもダウンロードいただけます。是非ご活用ください。

DLSを用いた測定事例(アプリケーションノート)

マルバーン・パナリティカルのDLS分析装置による測定事例をご紹介します。リンクをクリックして、資料をダウンロードしてご覧ください。

  • 後方散乱を用いた結晶化用タンパク質サンプルの評価
    ゼータサイザーナノZSを用いて、タンパク質結晶化工程の簡略化検討した実験を行ないました。測定の原理と効果、実験結果は、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。
  • 動的光散乱法を用いた顔料インクの粒子径測定
    ゼータサイザーナノZSを用いて、微粒子化された顔料インクの評価測定を行ないました。顔料インク測定結果は、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。
  • 混合ナノ粒子の分画およびサイズ評価 ―沈降速度法および動的光散乱法を用いて―
    2種類のラテックス粒子を混合したサンプルを用いて、ショ糖密度勾配液を用いた沈降速度法による分離を試み、ゼータサイザーナノZSを用いて、各分画を同定しました。測定結果は、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。
  • 粘度と粒子径の関係
    DLS測定においては適正な粘度計で得た粘度値を基に粒子径分布の計算させることが重要です。正確な粘度値であるかどうか検定するため、ゼータサイザーを用いて試験を行ないました。試験結果は、アプリケーションノートをダウンロードしてご覧ください。

最適なDLS装置を選ぶには

DLS装置を選定する際には、測定対象となる粒子のサイズや濃度といった基本的な条件に加え、測定の再現性やスピード、日常業務での扱いやすさ、さらには関連規格への対応状況を考慮することが重要です。

DLSの用途

動的光散乱法は、強力な分析技術であり、Zetasizer Advanceのような高度な機器と組み合わせると、さまざまな業界で不可欠なものになります。

Zetasizer Advanceを、動的光散乱技術と組み合わせると、さまざまな分野にわたって粒子径、安定性、及び相互作用について非常に優れた理解が得られます。

医薬品およびバイオテクノロジー

Zetasizer Advanceは、薬物送達システムのナノ粒子の特性評価に役立ち、薬効と安定性に不可欠な正確な粒度分布分析を確保します。

タンパク質凝集速度論の研究を容易にし、研究者がタンパク質製剤を最適化し、バイオ医薬品製造における製品品質を確保することを可能にします。 

製薬ソリューション

医薬品製剤の上市までのスピードを加速するために必要な物理化学的知見
製薬ソリューション

化粧品およびパーソナルケア

化粧品業界ではZetasizer Advanceは、クリーム、ローション、及びエマルジョンの処方に不可欠なコロイド分散のサイズと安定性の特性評価に役立ちます。

日焼け止め製剤中のナノ粒子の安定性の評価に役立ち、効果的なUV保護と製品の長期安定性を保証します。 

食品および飲料

Zetasizer Advanceは、食品エマルジョンの粒度分布と凝集挙動の分析を支援し、製品の質感、安定性、及び官能特性に影響を与えます。

これは、飲料中のコロイド懸濁液の安定性を評価するために使用され、製品の透明性と保存期間の安定性を確保します。

材料科学とナノテクノロジー

材料科学ではZetasizer Advanceは、ナノ粒子のサイズ測定と特性評価に使用され、さまざまな用途のために機能性ナノ材料の合成と最適化をガイドします。

これは、コーティングおよび複合体におけるナノ粒子の安定性と凝集速度の研究を支援し、機械的強度や光学的透明性などの材料特性に影響を与えます。 

環境モニタリング

Zetasizer Advanceは、環境試料中のナノ粒子の粒度分布と凝集挙動を分析し、生態系や人間の健康への影響を評価することで、環境モニタリングの取り組みに貢献しています。

これは、廃水処理プロセスにおいて操作したナノ粒子の挙動を研究するのに役立ち、効率的な除去を可能にし、環境への曝露を最小限に抑えます。 

当社のDLS装置

Malvern Panalyticalでは、研究者や業界の専門家の多様なニーズを満たすように設計された最先端のDLS装置を提供しています。
Zetasizer Advance シリーズは、精度、信頼性、ユーザーフレンドリーな機能を組み合わせ、正確で有益なデータを提供します。

主な機能と特徴は次のとおりです。 

  • 1~2分で正確で信頼でき、再現可能な粒子径分析
  • 多角度動的光散乱法 (MADLS)は、DLSの分解能を向上させ、角度に依存しない粒径結果を提供
  • 簡単な、ピークごとの粒子濃度測定
  • 平均サイズの取得に必要なのは、液体の粘度に関する知識のみ
  • NIBS を使用し、サンプル前処理が簡単または不要で、高濃度の濁ったサンプルを直接測定可能
  • 粒子の粒子径測定、<1 nm~15 um
  • 測定可能分子量、MW < 1000 Da
  • 小容量要件(わずか3 µL)
  • ナノ粒子製造の管理に使用できるアットラインプロセスシステム
  • 標準規格準拠: ISO 13321, 21 CFR Part 11

当社の製品の比較

  • ゼータサイザーアドバンスシリーズ

    あらゆる用途に対応する光散乱装置

    ゼータサイザーアドバンスシリーズ