バイオ医薬品開発における物性評価技術:バイオシミラー

バイオ医薬品開発の各ステージにおける評価すべき項目と、それらの評価が可能なマルバーン・パナリティカルの測定技術をご案内しています。こちらのページでは、「バイオシミラー」について詳細をご紹介します。

バイオシミラーはイノベーターとの同等性・同質性を提示する必要がある。 マルバーン・パナリティカルの測定技術は、複数のパラメータで同等性・同質性の評価をサポートする。

SEC-LSによる同等性評価(SEC-LS

ベバシズマブとの粒子径と凝集体の比較事例

ベバシズマブBevacizumabは、血管内皮細胞増殖因子に対するモノクローナル抗体であり、抗がん剤として使用されている。ベバシズマブ(イノベーター)とそのバイオシミラーを、サイズ排除クロマトグラフィー (SEC)に光散乱検出器(LS)を接続した条件で測定し、各シグナルを比較した。RIシグナルは僅かな違いはあるが、ほぼ同じようなピークが得られていることが分かる。また光散乱シグナル(RALS)もモノマーとダイマーは同じように検出できていることが確認できる。しかし、バイオシミラーはイノベーターにはない凝集体と思われるピークが確認できており、光散乱の特徴が出ている結果となっていることが分かる。これはRIシグナルだけでは分からなかったことであるため、SECに複数の検出器を接続させることで、より詳細なイノベーターとバイオシミラーとの比較が可能となる。

このようにSEC-LSを用いると、UVやRIでは検出不可能なわずかな凝集体の混在も評価が可能となり、バイオシミラーの有意性についての議論が可能となる。

→SEC-LSでイノベーターとバイオシミラーの凝集体の混在の差を検出

DSCによる同等性評価(DSC

レミケードとの高次構造安定性の比較

WHOでは、遺伝子組換えで得られたタンパク質のバイオ医薬品に対する品質や安全性に対するガイドラインを呈示してる。そこには高次構造(HOS)を確認する必要性が示されており、その手段の一つとして示差走査型カロリメトリ―(DSC)が挙げられている。

下図は抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体、RemicadeのバイオシミラーであるRenflexis(左)とInflectra(右)が、イノベーターと同等の高次構造安定性を有しているかを比較しているものである。この測定では、同一処方条件の緩衝液を用いて測定を行っている。いずれのデータもイノベーターであるRemicade(実線)と同等の形状をしているが、 Renflexis は68~75 ℃付近(ハイライト部分)でイノベーターの形状とズレていることが分かり、Inflectraの方がより同等性が高いことが示唆されている。

このようにDSCを用いたバイオシミラーの評価は、データそのものの形状をフィンガープリントとして比較することで、イノベーターとの同等性評価が可能である。

→DSCでイノベーターに対する2つのバイオシミラーのフィンガープリントのパターンの違いを検出

NTAによるSVP評価(NTA

イノベーターとバイオシミラーのSVP比較

バイオシミラーではイノベーターに対し、凝集体(SVP)がより低減していることが望ましい。

下図では、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)を用いて、イノベーターとバイオシミラーの2種の抗体医薬品でSVPの分析をした結果である。SVPの含有量は、一般的にSECを用いた分析が行われているが、その上限は約100 nmである。その点、NTAはサブミクロン領域のSVPをカバーできる手段となっているのが特長である。検出されたSVPの濃度は、イノベーターの方が高くなっており、バイオシミラーの方が免疫原性リスクに違いが生じている可能性がある。

このようにNTAを用いると、従来のSECなどの手法では取得できなかったSVPについて定量的に評価することが可能である。

→NTAでイノベーターとバイオシミラーのSVP含有量の違いを定量的に評価

多角的な安定性評価(DLS)(SLS)(ELS)(DSC)(NTA

治療用抗体のイノベーターとバイオシミラーの多角的な比較

マルバーン・パナリティカルが提供する技術で、抗体のイノベーターとバイオシミラーの安定性を、様々な手法で評価した結果の一覧と、動的光散乱法(DLS)の結果を示す。

DLSの拡散係数の濃度依存性(kD)の結果から、イノベーターは濃度の増加に伴い拡散係数が減少し、バイオシミラーは、拡散係数が増大することが確認された。下図のDLS測定データを見ると、バイオシミラーはイノベーターに比べ、濃度依存的に形状が異なり、また粒子径が小さくなっている。これは分子間相互作用の反発力によって、見かけ上の拡散係数が大きくなっていることが影響している。これらのことから分散安定性はバイオシミラーの方が良いことが示唆された。またDLSのTaggの結果とDSCによるTmの結果には相関がみられ、熱安定性の観点からもバイオシミラーの方が安定性が高い結果が示唆された。加えて、NTAのCtotalとSVPに差があることは、溶液中に多量体が形成されていることを示唆する。よって、イノベーターとバイオシミラーを比較すると、イノベーターの方が差が大きいので、様々な多量体を形成していることが推測される。この結果はその他の測定技術の結果と一致する。

このように、マルバーン・パナリティカルが提供する技術でバイオシミラーの有意性を多角的に評価することが可能である。

→複数の評価技術でイノベーターに対するバイオシミラーの有意性をサポート


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