溶液中のナノ粒子解析
SAXS は、サンプルによって散乱したX線の強度を散乱角度の関数として測定する分析技術です。 測定は0.1~5度という極めて狭い角度で行われます。
溶液中のナノ粒子・高分子の解析、とりわけサイズ解析には溶液散乱技術が用いられます。溶液散乱技術の特徴としては、様々な環境下での特性変化、例えばある温度における構造変化などを算出できる点があげられます。
溶液散乱技術のポピュラーなものとしては、動的光散乱(DLS)法など可視光を用いるものなどが存在します。その中で、X線小角散乱法(以後、SAXS法)はX線源を試料に照射し、概ね10°以下の小角度の散乱強度を解析することで、ナノ粒子のサイズ等の情報を取得することができます。SAXS法によって得られた小角度の散乱強度パターンから、慣性半径(Rg)、最大長(Dmax)の算出の他、体積基準の粒度分布(Polydispersity)、相互作用パラメータ(第2ビリアル係数)を求めることができます。これらのパラメータ算出以外にも、粒子の形状予測(例えば球状、ロッド状、中空など)も実施でき、一般のフリーソフトウエアを用いれば、溶液中の高分子のモデルも計算することができます。
SAXS法はDLS法とよく比較されます。DLS法と比べ凝集等粗大粒子の影響を受けにくく、可視光範囲の光学活性の影響を受けないため、色のついた試料にもよく適応できます。
また、根本的な部分に触れますが、SAXSは溶液媒体に限らないところも特徴です。例えばゲル中に含まれる無機材料の粒子径や高分子の網目サイズなどにも適応できます。従いまして、DLS法では困難であったブラウン運動しない/しづらい高粘度溶液中の測定に対して効果的に計測できます。
X線小角散乱法は、X線回折散乱法の低角側の散乱光を解析する方法で、概ね10°以下の角度における強度を解析します。
散乱角度が小さくなれば、反映するサイズは大きくなり、約0.1°に対して約100 nmの粒子径に相当します。
X線照射により得られた散乱曲線から、逆フーリエ変換することによって粒子径(慣性半径;Rg)および最大長(Dmax)を導くことができます。
SAXS測定では、一般的なXRDで求められるような内部の格子間距離だけでなく、例えば溶液中の粒子サイズを求めることができます。それに加えて、粒子形状の分析(球状、ロッド状、中空など)が可能となります。また、外部ソフトウエアを用いれば、分子構造解析のシミュレーションを実施することができます。
一方、0°漸近の値からは、溶液中の絶対分子量が算出できるため、溶液濃度を変化させることによって分散性パラメータ(第2ビリアル係数)を導くこともできます。
マルバーン・パナリティカルによるSAXS測定は、ScatterX78という小角散乱専用モジュールを、Empyrean(エンピリアン)に接続することによって実現します。このモジュールにより、一般的な粉末X線解析のみならず、溶液、ゲル、個体、ファイバー状のサンプルの解析を実現することができます。
特に溶液散乱に関しては、必要サンプル量が約30 μLと微量で実施することができ、オプションの温調システムを用いることで、温度変化に伴う高分子の特性変化をモニタすることも可能です。
また、これまで解析に専門性を必要としていたSAXS測定ですが、Guinier解析、PDDF解析、Dv解析など様々な解析が、ソフトウェアにより簡便に実施できます。これらには、解析の確からしさを示す残差が表示されるため、ルーチンでの解析をさらにスムーズに実施することができます。
![]() | Empyrean Nanoエディション | 複数の長さスケールで(ナノ)材料の構造特性評価に使用可能な各種X線散乱技法に対応する専用のX線散乱プラットフォームです。 |
![]() | Empyrean多目的X線回折プラットフォーム | コンパクトな設定でSAXS測定用に素早く構成できます。 幅広い光学部品、サンプルステージ、ディテクタを選択できます。 特定のサンプルやパフォーマンス要件に構成を合わせることができます。 |
![]() | ScatterX78 | Empyrean向けのPreFIXアタッチメントで、高性能SAXS/WAXS測定を実現します。 ビームパスは真空に引かれ、散乱の弱いサンプルに対しても良好な感度を達成します。ハイブリッドピクセルディテクタは、固有ノイズレベルが極めて低く、測定範囲が広く、計数率の線形性に優れ、ピクセルサイズが小さいことから、この用途に最適です。 |
![]() | EasySAXS | ソフトウェアには、SAXSデータ分析用のツールボックスが一式揃っています。 このソフトウェアを使用することで、データ抽出、モデルに依存しないデータ分析、粒子の粒度分布の決定、各種モデルを使用したフィッティングやシミュレーションができます。 また、自動化やレポート生成のオプションも用意されています。 実績ある先進のアルゴリズムが搭載されており、グラフィックユーザーインターフェースから簡単に使用できます。 EasySAXSは究極の使いやすさを目指して設計されており、初心者にも上級者にも適しています。 |
SAXSは、サンプルによって散乱したX線の強度を散乱角度の関数として測定する分析技術です。 測定は0.1~5度という極めて狭い角度で行われます。
Braggの法則から、散乱角度を狭めるほど、より大きな構造的特徴を調べられることがわかります。 SAXS信号が観測されるのは、一般に1~100 nmという長さのナノメートルスケールの構造的特徴が材料に含まれている場合です。 一方、広角X線散乱法(WAXS)ないし広角X線回折法(WAXD)では、材料に含まれる構造を、原子間距離というはるかに小さな長さのスケールで調べます。 Small angle X-ray scattering and wide angle X-ray scattering (SAXS and WAXS) are complementary techniques.
SAXS測定の実験設定では透過法配置を用います。 そのためには、幅が極めて狭いながら強度の高い入射X線ビームを作り出すX線光学系が欠かせません。 なぜなら、サンプルからの比較的弱い散乱信号を直接ビームのすぐ近くで測定する必要があるからです。 また、線形性が高く、測定範囲が広く、固有ノイズを無視できるようなディテクタを用いることも不可欠です。 ディテクタの空間分解能が高いとハイエンドのSAXS装置に有利です。というのも、コンパクトな実験設定でも良好な低角分解能を実現できるからです。
SAXSは、ナノ材料の構造特性評価用として用途の最も広い技法に数えられています。 固体、粉末、ゲル、液体分散媒のサンプルに対応しており、非結晶か、結晶または準結晶かを問いません。 測定に必要なサンプル調製は最低限で済み、たいてい現場で対応できます。 全体を測定する技法であるSAXSは、大きなサンプル容積にわたって平均化された構造的特徴を調べます。
SAXSで調べられる典型的なサンプル:
測定された散乱プロファイルを評価することで、材料の構造や特性について次のような幅広い情報が得られます。
こうしたパラメータの制御は重要です。なぜなら、これらはナノ材料の化学特性や物理特性と関連しているからです。 これらはまた、用途における材料のパフォーマンスを決定づけます。 SAXSは、R&Dでの新たな材料の開発に、そして品質管理に貢献するツールです。
![]() Empyrean Nanoエディション多目的X線散乱プラットフォーム |
![]() Empyrean(エンピリアン)多目的X線回折装置 |
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技術 | ||
X-ray Diffraction (XRD) |