X線吸収分光法(XAS)
材料の局所構造と電子状態に関する元素別の知見
材料の局所構造と電子状態に関する元素別の知見
X線吸収分光法(XAS)は、材料の局所原子構造と電子状態の研究に用いられる強力な分析手法です。回折法が結晶の長距離結晶構造を明らかにするのに対し、XASは個々の原子を取り巻く周辺環境について元素別の情報を提供します。
この特性により、XASは触媒、電池電極、ナノマテリアル、機能性酸化物などの複雑な材料の研究に特に有用です。
XASは、材料科学、化学、物理学、環境科学、生物学など、幅広い分野で活用されています。これらの実験は高輝度X線源を使用することから、従来シンクロトロン施設で行われてきました。しかし、こうした施設の利用は制限されており、ビーム利用枠の確保は非常に競争が激しいため、貴重な時間とリソースを投じることになります。
Empyreanなどの最新実験装置により、現在はラボでXAS測定を直接行うことが可能となり、高度な化学的および構造的特性評価が簡単に利用できるようになっています。
X線吸収分光法の実験では、特定のエネルギーを持つX線をサンプルに照射します。入射X線のエネルギーが原子の内殻電子の結合エネルギーと一致すると、その電子は非占有状態に励起されるか、原子から放出されます。
X線吸収端でエネルギーを変化させながら、サンプルがX線をどれだけ強く吸収するかを測定することで、XASスペクトルが得られます。
吸収係数は、サンプルありとなしで測定されたX線強度を比較し、ランベルト - ベールの法則を適用することで決定されます。
吸収端近傍の範囲で入射X線エネルギーをスキャンすることで、詳細な吸収スペクトルが記録されます。このスペクトルに現れる微細構造には、吸収元素の周囲の原子配置や電子構造に関する情報が含まれています。
XASスペクトルは、それぞれが異なる構造情報を提供する、次の2つの主要な領域で構成されています。X線吸収端近傍構造(XANES)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)です。
各領域の詳細については、以下をご覧ください。
吸収端近傍領域(通常約50 eV以内)は、XANESと呼ばれています。
XANESは、以下に対して高い感度を示します。
この特性により、XANESは、化学状態の変化や酸化還元反応の研究において特に有用です。
吸収端近傍領域の先にはEXAFS領域が存在し、これは吸収端より数百電子ボルトも上に広がることがあります。
EXAFSで観測される振動は、放出された光電子と隣接原子により散乱された波との干渉で生じます。
これらの振動を分析することで、次のような詳細な情報が得られます。
このように、EXAFSは、長距離秩序を持たない系でも局所構造を同定できる強力なツールとなります。
X線吸収分光法(XAS)を使用すると、材料内にある特定の元素の局所的な化学状態や構造環境に関する詳細な知見が得られます。
XASから得られる主な情報は次のとおりです。
XASは元素特異的であるため、複雑な混合物や多相材料でも個々の元素を選択的に分析できます。
シンクロトロン施設は強力なX線源を備えていますが、利用機会が限られる場合が多く、実験をするには、十分に時間の余裕をもって計画する必要があります。
ラボ環境でXASを行うことで、研究者は次のことが可能となります。
Empyrean XASにより、研究者は自身のラボで、XASを自由に直接利用できるようになります。
X線吸収分光法が、主要応用分野の研究をどのように支援しているのかをご覧ください。
多目的X線プラットフォームに、局所の化学的知見をプラス
XASは現在、Empyreanプラットフォームでのみ利用可能です。これにより、ラボから出ることなく、シンクロトロンに匹敵する知見を得ることができます。 Empyreanは、X線回折(XRD)、X線散乱、イメージング、XASといった最先端技術を、単一のモジュール式研究プラットフォームに独自に統合しています。
XAS対応のEmpyreanには次の機能が含まれています。
この独自の統合技術により、研究者は1台の装置プラットフォームで構造情報と電子情報をすべて取得できるようになり、相同定と定量も可能になります。